2003 Fiscal Year Annual Research Report
PI3K-Akt経路の活性化による成人T細胞白血病発症の分子機構
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14570988
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
森 直樹 琉球大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10220013)
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Keywords | PI3キナーゼ / Akt / 成人T細胞白血病 / HTLV-I / Tax / NF-κB |
Research Abstract |
成人T細胞白血病(ATL)は、HTLV-Iを原因として発症するリンパ系腫瘍である。HTLV-IにはpXと呼ばれる特異な領域があり、Taxタンパク質が産生される。Taxは感染細胞の不死化や細胞周期の促進、染色体の不安定性などを誘発し、発がんに向かわせると考えられている。なかでもTaxによるNF-κBの活性化は、T細胞増殖性サイトカインやサイトカイン受容体、アポトーシス阻害タンパク質や細胞周期関連タンパク質の発現を増強させ、感染細胞に不死化や細胞周期の進行をもたらす。我々は、ATL細胞やATL細胞由来感染細胞株においてNF-κBが恒常的に活性化しており、NF-κB活性化はATL細胞の重要な形質であることを明らかにした。さらに、NF-κB阻害剤のHTLV-I感染細胞株やATL細胞に対する効果を検討し、選択的なアポトーシス誘導効果や感染細胞株移植マウスにおける抗腫瘍効果を報告した。AktはPI3Kの下流で活性化するセリン/スレオニンキナーゼであり、その活性化にはキナーゼドメイン内のスレオニン308(T308)とC末端のセリン473(S473)がリン酸化されることが必要である。AktがNF-κBのRelA(p65)をリン酸化し、転写活性を亢進することやアポトーシス抑制のシグナル伝達に重要な役割を果たすことが報告されている。我々は、HTLV-I感染細胞株におけるAktの活性化を調べた。Tax発現細胞株4/5でAktのS473のリン酸化が認められ、非発現細胞株はすべてAktのリン酸化は見られなかった。Aktのキナーゼ活性も検討したが、Aktのリン酸化と一致していた。Aktによりリン酸化されることが報告されているPDK1、GSK3β、FKHR、RelAのリン酸化のうち、RelAのリン酸化のみがAktのS473のリン酸化と相関していた。なお健常人の末梢血単核球ではAktもRelAもリン酸化を認めなかった。次に、TaxがAktをリン酸化するのか検討した。HeLa細胞および293細胞にTax発現プラスミドとAkt発現プラスミドを導入し、TaxによるAktのリン酸化誘導能を調べた。両細胞でTaxはAktのT308とS473をリン酸化することが明らかとなった。さらにTaxはRelAのリン酸化も誘導した。TaxはNF-κB経路に加え、CREB経路を活性化してウイルス自身の転写を活性化する。TaxによるAktのリン酸化にNF-κBとCREB経路の活性化のどちらが重要であるのかを調べるために、それぞれの経路に対応したTax変異体を用いて解析した。その結果、CREB経路の活性化がAktのリン酸化に密接に関連していることがわかった。PI3K-Aktの細胞生存シグナルへの影響を見る目的でPI3K阻害剤LY294002のTax発現感染細胞株への影響を検討した。LY294002はAktのリン酸化を阻害したが、NF-κBのDNA結合能には影響を与えなかった。LY294002は濃度依存性にTax発現感染細胞株の増殖を抑制した。この細胞増殖抑制はアポトーシスの誘導であった。さらに、ATL患者の白血病細胞に対してもLY294002は濃度依存性に増殖を抑制した。以上の結果、TaxはAktをリン酸化することで、RelAをリン酸化し、HTLV-I感染細胞の生存を維持していることが明らかとなった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Hayashibara T: "Possible involvement of aryl hydrocarbon receptor (AhR) in adult T-cell leukemia (ATL) leukempgenesis : constitutive activation of AhR in ATL."Biochem Biophys Res Commun. 300・1. 128-124 (2003)
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[Publications] Imaizumi Y: "Expression of the c-Met proto-oncogene and its possible involvement in liver invasion in adult T-cell leukemia."Clin Cancer Res. 9・1. 181-187 (2003)
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[Publications] Dewan MZ: "Rapid tumor formation of human T-cell leukemia virus type 1-infected cell lines in novel NOD-SCID/γc^<-/-> mice : suppression by an inhibitor against NF-κB."J Virol. 77・9. 5286-5294 (2003)
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[Publications] Ohashi M: "Human T-cell leukemia virus type 1 Tax oncoprotein induces and interacts with a multi-PDZ domain protein, MAGI-3."Virology. 320・1. 52-62 (2004)
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[Publications] Mori N: "Apoptosis induced by the histone deacetylase inhibitor FR901228 in human T-cell leukemia virus type 1-infected T-cell lines and primary adult T-cell leukemia cells."J Virol. (In press).
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[Publications] Mori N: "Elevated expression of CCL5/RANTES in adult T-cell leukemia cells : possible transactivation of the CCL5 gene by human T-cell leukemia virus type I Tax."Int J Cancer. (In press).
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[Publications] Mori N: "Aberrant activation of NF-κB/Rel and AP-1 in adult T-cell leukemia. In : Gann Monograph on Cancer Research No.50."Japan Scientific Societies Press and Karger. 73-92 (2003)