2002 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-βシグナルを利用した動脈壁プラーク安定化療法の開発
Project/Area Number |
14571086
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
横手 幸太郎 千葉大学, 医学部附属病院, 助手 (20312944)
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Keywords | TGF-β / Smad / 動脈硬化 / 細胞内シグナル伝達 / 平滑筋細胞 / 遊走 / 増殖因子 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
C57BL/6バックグラウンドのSmad3欠損マウスを作製した。PIT(photo-induced thrombosis)法を用い、欠損マウスならびに野生型マウスの大腿動脈に内皮剥離傷害を加えた。傷害後4週の時点で、野生型に比べ欠損マウスの大腿動脈では著しい内膜肥厚病変が認められた。Smad3欠損に伴う内膜肥厚増強の機序を探るため、マウス大動脈より平滑筋細胞を分離・培養し、その生物学的機能を解析した。TGF-βは野生型細胞の増殖活性を抑制したが、欠損細胞ではその効果が著しく減弱していた。一方、TGF-βによる細胞遊走作用は野生型細胞に比べ、欠損細胞で増強していた。以上のことから、血管平滑筋細胞においてSmad3はTGF-βによる細胞増殖抑制作用の主要なメディエーターであるが、遊走についてはむしろ抑制的に働くことが示唆された。以上のことから、Smad3欠損マウスでは平滑筋細胞増殖抑制の減弱と細胞遊走の亢進の総和として内膜平滑筋細胞層の著しい増生がもたらされたと考えられる。さらにTGF-βはストレス活性化MAPKであるp38の活性化を誘導した。Smad3欠損細胞の遊走活性はp38の特異的阻害剤によってほぼ完全に抑制されたことから、p38はTGF-βによる遊走シグナルの主要因子であることがわかった。すなわち、平滑筋細胞ではTGF-β受容体の下流においてp38は促進的に、Smad3は抑制的にそれぞれ細胞遊走をつかさどると考えられた。 また代表的な粥状動脈硬化モデルとして知られるアポEノックアウトマウスとSmad3欠損マウスとを交配し、ダブル欠損マウスを作製した。現在、普通食投与にて飼育を継続中であり、今後両者について粥状動脈硬化病変の質的・量的な解析を行なう予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Asaumi S, Takemoto M, Yokote K et al.: "Identification and characterization of high glucose and glucosamine responsive element in the rat osteopontin promoter"J Diabetes Complications. 17・1. 34-38 (2003)
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[Publications] Kanaki T et al.: "Functional analysis of aortic endothelial cells expressing mutant PDGF receptors with respect to expression of matrix metalloproteinase-3"Functional analysis of aortic endothelial cells expressing mutant PDGF receptors with respect to expression of matrix. 294・2. 231-237 (2002)
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[Publications] Mori S, Takemoto M, Yokote K et al.: "Hyperglycemia induced alteration of vascular smooth muscle phenotype"J Diabetes Complications. 16・1. 65-68 (2002)
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[Publications] 横手幸太郎, 齋藤康: "ウェルナー症候群と糖尿病"内分泌・糖尿病科. 13. 619-625 (2002)
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[Publications] 横手幸太郎: "高脂血症治療におけるスタチンの位置付け"治療学. 36. 463-466 (2002)
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[Publications] 横手幸太郎: "プラーク構成細胞の起源"日本医師会雑誌. 128. 276-278 (2002)
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[Publications] 横手幸太郎, 齋藤康: "循環器New Trendシリーズ:虚血性心疾患のリスクファクターと予防戦略"メディカルビュー社、東京. 154 (2003)