2002 Fiscal Year Annual Research Report
1型糖尿病感受性MHC分子より分離された膵ラ氏島由来抗原の疾患発症に果たす役割
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14571117
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Research Institution | Okinaka Memorial Institute for Medical Research |
Principal Investigator |
中西 幸二 財団法人冲中記念成人病研究所, 研究員 (80211423)
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Keywords | 1型糖尿病 / MHC分子 / 抗原ペプチド / 膵ラ氏島 |
Research Abstract |
1型糖尿病は主要組織適合性抗原(MHC)が発症に関与する自己免疫疾患で、T細胞による膵β細胞の破壊により引き起こされる。本研究の目的は1型糖尿病感受性のMHC分子に提示され、その発症に関与する膵ラ氏島由来の抗原を明らかにすることである。1型糖尿病患者末梢血よりB lymphoblastoid cell lineを作成し、10^<10>個まで培養した。一方の培養系にはヒト胎児膵ラ氏島株、1B2C6の破砕物をパルスし、もう一方は培地のみとし、NP-40を含むlysis buffer処理で得た細胞表面蛋白より、アフイニテイークロマトグラフィーにてHLA-DR、-DQ分子を得た。さらに酸処理の後、逆相HPLCにかけ、HPLCのパターンを比較し、1B2C6の破砕物のパルスで特異的に出現したピークについてアミノ酸のシークエンシングをおこなった。さらにそれを元に、ホモロジー検索を行い、ペプチドが由来する蛋白を同定した。また、1B2C6よりmRNAを調整し、RT-PCRにてこの蛋白のcDNAのクローニングを行い、発現ベクターにサブクローニングし、大腸菌での蛋白の発現と精製を試みた。次に、得られたペプチドを合成しモルモットに免疫して抗血清を得、これを用いることにより正常ヒト膵組織におけるこの蛋白の局在を調べた。抗原ペプチドのHPLCの溶出パターンはHLA-DQ分子よりのもので1B2C6のパルスに特異的な3つのピークが得られた。このうちの1つでアミノ酸14個よりなるペプチドを得た。ホモロジー検索で元の蛋白も同定できた。この蛋白を大腸菌でHis tag蛋白として発現が可能であったが、精製が困難で現在も検討中である。ヒト膵組織を上記ペプチドに対する抗血清で染色をするとラ氏島に全般的に染色された。1型糖尿病感受性MHC分子であるHLA-DR4によって、ヒト胎児膵ラ氏島株、1B2C6のパルスによってnaturally processed antigenとして提示される抗原を同定した。この蛋白はヒト膵組織においてもラ氏島に特異的な発現をみた。今後、この蛋白、あるいは合成HIPペプチドに対する1型糖尿病患者末梢血T細胞の反応を検討する予定である。
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