癌遺伝子治療における治療抵抗性機構の解明とその克服へ向けた基礎的研究

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14571125
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 武田 泰隆 東京大学, 医科学研究所, 助手 (40163422)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 清水 本武 東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 主任研究員 (10124463) ; 善本 隆之 東京医科大学, 難病治療研究センター, 助教授 (80202406)
• Keywords: がん遺伝子療法 / 耐性 / Fas / アポトーシス / DNA欠落 / DNAメチル化 / 抗体療法

Research Abstract

我々は今までFasを介するアポトーシスの癌遺伝子治療への応用の基礎的研究を行ってきた。マウス肝癌株MH134およびマウス乳癌株MM2にFas cDNAを導入して、Fas,発現MH134株(F6b株)、MM2株(C8h株)を樹立し、抗Fas抗体(Jo2)およびFasリガンドにより、in vitroで強力なアポトーシスを誘導し、in vivoでアポトーシス誘導による癌治療の可能性を証明している。F6b細胞をgld/lprマウスに移植して腫瘤を形成した後に抗Fas抗体で治療すると、臨床的には完全治癒するが、潜伏期間をおいて再増殖がみられた。従って、癌細胞にFas cDNAを導入し、Fas-FasL系を介するアポトーシス誘導によるターゲット療法は、生体内でも迅速かつ効率よい殺細胞作用を発揮し、腫瘍の消失をもたらす非常に有望な療法である。しかし、臨床応用を考えるとき、一旦消失した腫瘍が再発し、もはや抗Fas抗体誘導アポトーシスに抵抗性になっていることが大きな問題点となる。そこで、耐性誘導機構を解明し、耐性を抑制することにより、がん遣伝子療法の効果増強方法の開発を試みる。
今年度は、再増殖した(耐性)腫瘍は抗Fas抗体やFasリガンドに強い抵抗性を示し、FACSで解析すると、Fas抗原の著しい低下と消失が認められた。耐性細胞をクローニングレて、FascDNAをサザンブロットで調べると、Fas発現の無いクローンはFas cDNAが認められなかったが、Fas発現の低下クローンは認められた。従って、Fas発現の無いクローンは導入したFas cDNAが欠落していることが明らかになった。一方、Fas発現の低下クローンは、DNAメチル化に関係する制限酵素MspIとHpaII処理した後のサザンブロットの実験結果から、Fas発現の低下はDNAのメチル化によるものであった。以上の結果より、腫瘍細胞は遺伝子導入したFascDNAの欠落やメチル化する事により、Fas発現の消失或いは低下させることによって抗Fas抗体の攻撃を逃れ、再増殖することが示唆された。
以上の我々の実験結果から、導入遺伝子の欠落とメチル化を阻害することにより耐性誘導が抑制され、がん遺伝子療法の治療効果を増強させることの可能性が示唆された。さらに、これらの実験結果は、がん遺伝子療法ばかりではなく、遺伝子導入細胞の生体内での寿命・機能や挙動を知る上で、有用な知見である。

Research Products

• [Publications] Takeda, Y.: "Investigation on diagnostic parameters for contrast-enhanced breast MR imaging based on histology of invasive ductal carcinoma"Eur. Radiol. (In press). (2003)
• [Publications] Yanagie, H.: "Inhibition of growth of human breast cancer cells in culture by neutron capture using liposomes containing 10B"Biomed. Phammacother. 56. 93-99 (2002)
• [Publications] Hasebe, H.: "Bcl-2, Bcl-xL and c-FLIP(L) potentially regulate the susceptibility of human peripheral blood monocyte-derived dendritic cells to cell death at different developmental stages"Biomed. Pharmacother. 56. 144-151 (2002)
• [Publications] Matszawa, A.: "Significant role of Fas ligand-binding but defective Fas receptor (CD95) in lymph node hyperplasia composed of abnormal double-negative T cells"Immunology. 106. 470-475 (2002)
• [Publications] Toyota, H.: "Calpain-induced Bax-cleavage product is a more potent inducer of apoptotic cell death than wild-type Bax"Cancer Lett.. 189. 221-230 (2003)
• [Publications] 清水本武: "アポトーシスのすべて アポトーシス制御による治療法:悪性腫瘍"臨床免疫. 38巻特別増刊号. 404-408 (2002)
• [Publications] 武田泰隆: "気嚢作成法による内視鏡補助下乳腺扇形切除術と広背筋脂肪弁による充填術.乳腺鏡視下手術の実際(沢井清司、福間英祐編)"金原出版. 8(79-87) (2002)