2003 Fiscal Year Annual Research Report
インターロイキン-6による肺癌転移の免疫抑制機構の解析と免疫遺伝子治療への応用
Project/Area Number |
14571256
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
飯笹 俊彦 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (10272303)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾辻 瑞人 千葉大学, 医学部附属病院, 助手 (50344982)
渋谷 潔 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (20302565)
藤澤 武彦 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80110328)
伊豫田 明 千葉大学, 医学部附属病院, 助手 (10302548)
|
Keywords | 非小細胞肺癌 / インターロイキン6 / 免疫療法 / 遺伝子治療 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
本研究では肺癌の予後を悪くしている最大の原因である転移に着目し、IL-6発現が肺癌細胞に与える遺伝子の変化ならびに腫瘍組織における浸潤リンパ球解析より、担癌宿主が免疫能低下に至る機構を解析する。さらに担癌宿主の免疫能を回復させ転移を制御するためにIL-6遺伝子のアンチセンスDNA、あるいはIL-6レセプター抗体をもちいた免疫遺伝子治療の実験的研究を行なうことを目標として立案された。 平成15年度実施された研究は、1.IL-6非産生肺癌細胞株ならびにIL-6産生肺癌細胞株の生体内における増殖能の比較 昨年度までの基礎実験から肺腺癌細胞株ABC-1は、IL-6を産生しない細胞株であることを確認し、IL-6遺伝子をABC-1において発現させることに成功した。これによりIL-6産生以外に背景の一致する細胞株を樹立した。そして動物実験によりこれら細胞株では増殖能に差が見られることを明らかにした。つまりIL-6は腫瘍において発現された場合、生体内では腫瘍細胞増殖性に作用することを明らかにした。 2,ヒト肺癌切除組織を用いたIL-6発現ならびに血清中IL-6濃度の測定 原発性肺癌切除例90例より得た腫瘍組織を、抗IL-6抗体をもちいた免疫組織化学によってIL-6発現の局在を明らかにした。一方術前患者血清を採取し染色結果と比較した。これらの結果につき患者背景との比較検討をおこなった。 本年度は、基礎的研究としてIL-6非産生肺癌細胞株ならびにIL-6産生肺癌細胞株の動物モデルを用いた増殖能比較検討をおこない、IL-6発現が腫瘍と生体に及ぼすメカニズムを解析し、その機構の一部を明らかにした。また臨床における肺癌患者の腫瘍組織ならびに血清中では有意にIL-6発現の過剰が見られ、病期の進行とともに高頻度に見られることから何らかの予後不良因子として作用している可能性が示唆された。 本研究は最終年度であるがIL-6による肺癌増殖の分子機構が一部明らかになったことで、今後はIL-6拮抗物質を利用した免疫遺伝子治療が、肺癌の増殖制御に応用可能であることを明らかにし、肺癌の治療成績の向上を目指したい。
|