2003 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経損傷後の細胞外基質分解酵素の発現変化と細胞遊走・軸索伸長抑制機構の解明
Project/Area Number |
14571302
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Research Institution | KANAZAWA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
長谷川 光広 金沢大学, 医学系研究科, 助教授 (70218460)
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Keywords | MMPs / facial nerve injury / retrograde degeneration / Schwann cell / brainstem / facial nucleus |
Research Abstract |
中枢神経の再生をめざして、これまでneurotrophins(NGF、BDNF、NT-3等)、neural cytokine(FGF, interleukin、TGF-beta、CNTF等)、接着因子(L1、cadherin、integrin)等の研究がなされ、最近では多彩な潜在能力を持つ神経幹細胞のParkinson病等の疾患の治療への応用の可能性が脚光をあびている。しかしながら、損傷されたmotoneuronの機能回復に関しては、いまだ治療へのbreakthroughが得られていないのが現状である。本研究では、まず定位脳手術操作により作成する脳幹内顔面神経軸索損傷モデルを確立した。我々のモデルはIto等の方法(J Neurophysiol 1996)を改良したもので、乏突起膠細胞に被覆された部位である中枢神経軸索の損傷であり、その損傷の確実性、再現性を確認したところ、約8割の顔面神経核ニューロンが脱落する中枢部位損傷モデルより、さらにニューロンの脱落が激しいもので、顔面神経核の残存神経細胞はday7で約3割、day28ではわずか2%まで低下していた。この激しい神経脱落は、Waller変性による末梢神経軸索の変性に加え、末梢部位の軸索損傷ではほとんどみられない逆行性変性による神経細胞の脱落である。このモデルにおけるマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMPs、特にMMPs2、9)に注目したところ、MMP-9はinsitu zymographyでは脳幹内損傷部位周辺に特異的にgelatinase activityをみた。また、zymographyでは、損傷部とともに顔面神経核領域にMMP-9の活性上昇を確認した。ただしこれはまだ活性型と非活性型の区別はついていない。一方、MMP-2の活性上昇は見られなかった。次に、本モデルに脳幹内末梢神経移植を行ったところ、驚くべきことにday7で30%、day28で約10倍の数の神経細胞が生存している知見を得た。移植末梢神経組織内には、前述の各種成長因子が内在することが知られており、これらの作用が相乗効果をもって逆行性変性を抑制しえたものと考えられた。さらに、最近その造血因子としての作用に加え神経成長因子としての作用を併せ持つ可能性が注目されつつあるエリスロポイエチンを連日腹腔内投与したところ、day14で約7割の生存細胞の増加、day28では、約4倍の生存細胞の増加作用を確認した。現在、このエリスロポイエチンの運動神経細胞の逆行性変性抑制効果の作用機序をNOに注目し、検討中である。
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