2002 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外分光法を用いた体外循環後脳障害における新たな脳保護療法の検討
Project/Area Number |
14571452
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
垣花 泰之 鹿児島大学, 医学部附属病院, 講師 (20264426)
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Keywords | 脳障害 / 体外循環 / 近赤外線分光法 / チトクロムオキシダーゼ / 時間分解計測法 |
Research Abstract |
今回の研究の目的は、体外循環後脳障害のメカニズムを解明すると同時に新たな脳保護療法を確立することにある。本年度(平成14年度)は、体外循環中にみられる脳酸素需給アンバランスが、脳内酸素化状態やミトコンドリア(Mt)の形態にどのように影響するのかを検討した。<方法>イヌに体外循環を導入した後、体外循環時に起こる脳酸素需給のアンバランス[(a)血液希釈、(b)体温変化、(c)低酸素、(d)脳虚血]のモデルを作成し、脳内酸素化状態、Mtの形態変化を検討した。脳内酸素化状態は内頚静脈血酸素飽和度(Sjv02)、近赤外線分光法(NIRS)を用いた。血管内と細胞内で脳内酸素化状態を比較するため、NIRSの4波長解析法を用いてヘモグロビン(Hb)とチトクロムオキシダーゼ(cyt.ox.)の酸化-還元状態の変化を測定した。また時間分解測定法(TRS)を用いて散乱係数からMtの形態変化を検討した。<結果・考察>血液希釈(25-15%)を行うと、Sjv02は上昇したが、NIRSの血管内酸素化状態の指標である酸素化型Hbは軽度低下を示した一方、細胞内酸素化の指標であるcyt.ox.の酸化-還元状態は変化せず、Mtの形態変化の指標である散乱係数の有意な変化もみられなかった。酸素消費量の増大が示唆される復温時(15-35℃)に際しては、酸素化型Hbの有意な低下とcyt.ox.の還元化が認められた。一過性(5分間)の窒素吸入による低酸素血症や完全循環停止に伴う脳虚血では、cyt.ox.の還元化と散乱係数の増大が認められ、形態的にはMtの膨化が示唆された今回の結果では、細胞内エネルギーが枯渇する病態(低酸素血症や脳虚血)においてMtの形態変化がみとめられた。次年度では新たな薬物療法を行い、Mtの酸素化状態と形態への影響、および予後とを検討する予定である
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