2003 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外分光法を用いた体外循環後脳障害における新たな脳保護療法の検討
Project/Area Number |
14571452
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Research Institution | Kagoshima Universit |
Principal Investigator |
垣花 泰之 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (20264426)
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Keywords | 脳障害 / 体外循環 / 近赤外分光法 / チトクロムオキシダーゼ / 内頚静脈血酸素飽和度 / 低体温療法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、体外循環後脳障害のメカニズムを解明すると同時に脳保護療法を確立することにある。昨年度は体外循環中にみられる脳酸素需給のアンバランスが、脳内酸素化状態やミトコンドリアの形態にどのように影響するのかを検討した。本年度(平成15年度)は、低体温における脳血流、酸素需給バランス、脳内酸素化状態を詳細に検討し、体外循環中の脳保護療法としての低体温の有用性を評価した。<方法>麻酔下のイヌ12匹の上行大動脈・右房にそれぞれ送・脱血チューブを挿入後、体外循環を導入した。右総頚動脈にドップラー血流計を、右内頚静脈に採血チューブを挿入し、脳酸素運搬量・消費量を計測した。近赤外線分光装置の送・受光プローブを頭蓋骨に直接装着し、脳組織内の酸素化状態を測定した。低体温(15℃と25℃)の程度でイヌを2群に分け(1)導入前、(2)導入10分後、(3)低体温時(循環停止直前)、(4)低体温時(循環停止60分後)、(5)復温時(循環停止終了10分後)、(6)復温時(循環停止終了30分後)、(7)復温時(循環停止終了60分後)、(8)体外循環離脱10分後、(9)体外循環離脱60分後、の各時点で測定を行った。<結果・考察>今回の研究において、15℃群、25℃群の脳内酸素化状態は、60分間の循環停止によって悪化した。再灌流と復温に伴い、15℃群の方が内頚静脈血の酸素化は早期に回復し、25℃群に比べて常に高値を示した。さらに、脳内ミトコンドリアの酸化状態は早期に改善し、術後の脳障害もみられなかった。一方、25℃群では、内頚静脈血の酸素化や脳内ミトコンドリアの酸化-還元状態の回復が遅く、術後に痙攣や麻痺などの重篤な脳障害が出現し、48時間以内に全例死亡した。今回の検討より、60分間の完全脳虚血においても15℃の超低体温療法を施行することで脳障害を回避できることが示唆された。
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