2003 Fiscal Year Annual Research Report
高血圧ラットの血管弛緩作用に及ぼすアンギオテンシンIIの影響と揮発性麻酔薬の作用
Project/Area Number |
14571462
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
角谷 哲也 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (00264896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑埜 義雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70115913)
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Keywords | 高血圧ラット / 血管平滑筋 / アンギオテンシンII受容体 / 麻酔薬 |
Research Abstract |
平成15年度の本研究の実績報告 本研究の目的は、高血圧の治療薬であるアンギオテンシンII受容体拮抗薬(AIIA)の持続的投与により、揮発性麻酔薬使用下で治療抵抗性の低血圧が生じる現象について検討することである。 今年度は、血管平滑筋細胞内カルシウム濃度や細胞内酵素活性を測定することにより、vascular remodelingとAng IIによる血管反応性への影響および麻酔薬作用との関係を明らかにすることを計画した。 前年度は、正常血圧ラットと高血圧ラットにおける揮発性麻酔薬に対する感受性に差が認められなかった。アンギオテンシンII(Ang II)投与による細胞内カルシウム濃度([Ca^<++>]i)増加が揮発性麻酔薬であるイソフルランにより濃度依存性に抑制された。これらの知見により、揮発性麻酔薬が細胞内microtuble networkに影響するかどうかについて検討することとした。 まず、Ang IIによる血管収縮反応(細胞内機構)の中心的役割となるprotein kinase C (PKC)の酵素活性を測定するためにWestern blot法を用いた。その結果、ラット摘出大動脈における主要なPKC isozymeのうち、Ang II(10^<-7>-10^<-5>M)前処置によりノルアドレナリン(NA;10^<-5>M)の収縮が増強される現象は、PKCαの活性化によることを確認した。一方、揮発性麻酔薬であるセボフルラン(2 MAC)は、Ang II前処置によるNAの収縮増強作用を抑制したが、[Ca^<++>]iは上昇しなかった。この現象に関しては次のように考えている。血管平滑筋細胞内のリン酸化酵素であるRho kinaseはミオシン軽鎖をリン酸化させ平滑筋収縮を増強する。Rho kinaseは収縮蛋白のCa^<++>感受性を増強させることにより、[Ca^<++>]i変化とは別の平滑筋収縮調節機構として働いている。Rho kinaseの活性化により血管平滑筋収縮が招来されるが、セボフルランはRho kinaseの細胞内から細胞膜分画へのtranslocationを抑制することにより血管収縮を減弱させることをWestern blot法を用いて証明した。したがって、セボフルランはPKC活性を抑制し、その結果として収縮蛋白におけるCa^<++>感受性を抑制することが示唆された。 以上の知見から、揮発性麻酔薬は、血管平滑筋細胞内Ca^<++>濃度に影響を与えるだけでなく、PKCを始めとする蛋白リン酸化酵素の発現に影響を及ぼすことにより収縮蛋白Ca^<++>感受性を抑制し血管平滑筋を弛緩させる機序が考えられる。
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