2002 Fiscal Year Annual Research Report
開心術前後における細胞外液量変化と組織構造変化に関する解析
Project/Area Number |
14571464
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
津崎 晃一 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (90138107)
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Keywords | 生体インピーダンス法 / 体液組成 / 開心術 / 細胞外液量測定 / 周術期管理 |
Research Abstract |
周術期には、手術侵襲に基づく組織損傷や炎症機転により、体水分量の著しい再分配が生じる。例えば、組織の炎症は、毛細血管間隙や細胞膜の構造を破壊することにより、その透過性が亢進し、術中の体液喪失に対して行われる輸液療法は、かえって細胞や細胞間質における水分貯留を助長することが認められている。このような体液動態の変化は、周術期管理として日常的に測定される循環動態の指標からは評価が困難なため、新たなモニタリング技術の開発が求められている。一方、生体組織の電気的特性を、さまざまな周波数におけるインピーダンスとして評価する生体インピーダンス法では、電気的等価回路モデルに当てはめることにより、体液成分の動態を非侵襲的に追跡することが可能である。現在までに、同法により推定した細胞外液量が、腹部手術後の細胞外液量変化をよく反映し、さらに細胞浮遊液モデルへの非線形適合を行うことから、体液動態だけでなく、細胞膜を含む微細組織構造の変化に関する情報を抽出しうる可能性が示されている。今回の研究では、今までの理論的解析の応用として、人工心肺を用いた開心術前後における体液動態や組織構造変化を追跡することにより、本法の臨床的有用性を確立することにあるが、実測による術中水分バランスとの相関を検討した結果、細胞外液量の変化は生体局所インピーダンスとしての体幹抵抗との相関が高く(r=0.74)、全身抵抗との相関は低い傾向(r=0.36)が認められ、開腹術前後と同様な結果が得られた。また、生体インピーダンス法に基づく細胞外液量測定は、人工心肺使用に伴って経時的に増大する傾向を示し、周術期においては、細胞内外における水分シフトの著しく生じうることが示された。
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