2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14571507
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉田 正貴 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教授 (20201858)
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Keywords | 排尿障害 / 遺伝子治療 / 膀胱 / 低活動膀胱 / ムスカリン受容体 / エレクトロポレーション法 |
Research Abstract |
近年、排尿機構や尿路平滑筋の生理・病態に対する分子生物学的アプローチにより神経伝達物質受容体やセカンドメッセンジャーの詳細な解析が進んでいる。しかしながらこのような知見は未だ臨床的には充分反映されておらず、今後はこれらの分子を用いてより特異性の高い治療法が求められてゆくと考えられる。本研究では膀胱・尿道機能にかかわるさまざまな神経伝達物質の受容体遺伝子などを用い、排尿障害の遺伝子治療の開発を行うことを目的としている。 本年は昨年度に行ったラット膀胱へのin vivoエレクトロポレーション法を用いたM3ムスカリン受容体遺伝子の導入実験を病的実験モデルに応用し、片側骨盤神経切断(denervation)ラットの低活動膀胱へのM3受容体遺伝子の導入を行い、この方法の治療効果について検討を加えた。 200〜250gの雌性SDラットをペントバルビタール腹腔内投与にて麻酔をかけ、下腹部を正中切開し、膀胱および骨盤神経叢を露出し、膀胱枝を出している右側骨盤神経節を切除してdenervation膀胱(低活動膀胱)ラットを作製した。Denervation後のM3受容体数の経時変化を定量的リアルタイムRT-PCRを用いて観察し、M3受容体遺伝子導入時期を決定した。その結果、denervation後12週目に最適電気刺激条件を用いてM3受容体遺伝子を低活動膀胱に導入することとした。導入後10日目に摘出膀胱のM3受容体数の定量、収縮反応実験および麻酔下膀胱内圧測定を行った。 エレクトロポレーション法を用いてM3受容体遺伝子を導入したところ、遺伝子導入群ではdenervation群(12週)と比較して、M3受容体数の有意な増加を認めた。また、摘出膀胱平滑筋のカルバコールとEFSに対する最大収縮反応の有意な増加が認められた。膀胱内圧曲線の結果では、偽手術群では規則的な排尿が認められたが、denervation群(12週)では偽手術群と比較して、排尿収縮力(圧)の有意な低下と排尿間隔と排尿時間の有意な延長が認められた。またdenervation群にエレクトロポレーション法にてM3受容体遺伝子を導入することにより、有意な排尿収縮圧の増加と排尿間隔の改善が認められた。 本研究よりin vivoエレクトロポレーション法を用いたラット膀胱への遺伝子導入法が有用であることが示された。また、M3受容体の過剰発現がムスカリン受容体を介した膀胱収縮を増強させることが低活動膀胱モデルを用いて証明された。今後in vivoエレクトロポレーション法を用いたM3受容体遺伝子導入がM3受容体数の機能的減少に関連した排尿筋低活動の新しい治療手段となりうる可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)