2003 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠時の睡眠障害に関与する母体の免疫システムについての基礎的研究
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14571545
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
木村 昌由美 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助手 (40216859)
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Keywords | 妊娠 / 睡眠障害 / ホルモン充填 / サイトカイン / ラット / コロニー刺激因子 / エストロゲン / アセチルコリン活性 |
Research Abstract |
今年度の研究ではラットを用いた実験系において、1)妊娠初期に特有な生殖器官由来の催眠性サイトカインに着目し、そのサイトカインの中枢性作用を阻害したときに生じる睡眠変動について解析を深めるためのさらなる追試を行った。また、2)高齢雌ラットにおいてエストロゲン補填の処置を行い、睡眠一覚醒パターンを記録するのと同時に血中サイトカイン量ならびに脳内アセチルコリン(ChAT)活性を測定し、女性特有な睡眠パターンに対するエストロゲンの総合的な作用に検討を加えた。 1)研究代表者による先行研究で、ラットにおいてもヒトと同様、妊娠のきわめて初期に過剰睡眠が誘発されることがこれまでに確かめられている。この時期、着床に重要な役割を担う顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)の中和抗体をラットの脳室内に連続投与すると、対照IgGを投与された妊娠ラットにおける増加した睡眠パターンと比較して、ノンレム睡眠の約25%、レム睡眠の約60%が有意に減少し、最終的な出産を迎えられない母親ラットも数匹確認された。 2)高齢雌ラットにおいては、細菌毒の一種であるリポポリサッカライド(LPS)に対する弱まった感受性が、エストロゲン補填処置(ERT)によって回復することが、これまでの研究で示唆されている。追究の結果、SD系雌ラットでは、明期のノンレム睡眠量が明らかに減少する一方、暗期のレム睡眠が増加するという、睡眠-覚醒パターンにおける日内リズムの狂いが著しく観察され、それが一週間のERTで若齢レベルに若返ることが示唆された。その際、E_2処理された群でLPS刺激後の血中TNFα量が有意に増え、IL-1量には変化は見られなかった。脳内ChAT活性は特定の部位でE_2による上昇効果がみられており、この作用がレム睡眠リズムの回復に関係していると考えられる。
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[Publications] Kimura, M.: "Estrogen supplement restores impaired sleep patterns in old female rats"Sleep. 26. A30 (2003)
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[Publications] Kimura, M.: "Is hormone replacement therapy(HRT)worth trying to treat postmenopausal insomnia ? Abasic study"Sleep & Biol.Rhythms. 1. 233-234 (2003)
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[Publications] Honda, Y.: "Fos expression in orexin neurons of Siberian chipmunk increases during the light period"Jpn.J.Physiol. 53. (2003)
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[Publications] 木村 昌由美: "睡眠物質とその作用"Clinical Neuroscience. 22. (2003)
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[Publications] 木村 昌由美: "たまごクラブ 9月号(妊婦の睡眠ふしぎ発見)"風讃社. 286 (2003)