2002 Fiscal Year Annual Research Report
子宮頚癌の発生に関与する癌関連遺伝子の同定とその臨床応用
Project/Area Number |
14571561
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
榎本 隆之 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (90283754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 豊 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (10346215)
中嶌 竜一 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70335347)
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Keywords | 子宮頸部悪性腺腫 / Peutz-Jeghers Syndrome / STK11(LKB1) / クロナリティー解析 / 遺伝子診断 |
Research Abstract |
子宮頸部悪性腺腫(adenoma malignum)はminimal deviation adenocarcinomaとも呼ばれ子宮頸部腺癌の一亜型に分類され、他の腺癌組織型に比し予後不良とされているが、悪性腺腫が高分化型腺癌の単なる一亜型なのか、両者は全く異なった病態であるかについては未だ明らかではない。悪性腺腫の約10%がPeutz-Jeghers Syndrome(PJS)の家系に発生することが報告されており、PJSと悪性腺腫の関連性が示唆される。PJSの原因遺伝子として同定されたSTK11(LKB1)遺伝子は第19染色体短腕(19p13.3)に存在し悪性腺腫でヘテロ接合性の消失が高頻度にみられる部位と一致する。そこで、悪性腺腫の原因遺伝子がSTK11(LKB1)遺伝子であるかどうかについて検討した。 STK11(LKB1)遺伝子の点突然変異はPJSの家系でない悪性腺腫の11例中6例(55%)に認めたが粘液性腺癌では19例中1例(5%)のみに点突然変異を認めただけで、その他の組織型の腺癌4例や扁平上皮癌15例には点突然変異を認めなかった。したがって、STK11(LKB1)遺伝子は悪性腺腫の発生に深く関与していることが示唆された。悪性腺腫におけるSTK11(LKB1)遺伝子の異常の有無と転帰について考察した。STK11(LKB1)遺伝子に変異をもつ症例は変異をもたない症例より有意に予後不良であった。悪性腺腫は細胞異型がほとんどないため、悪性腺腫類似の腺管が頸部の比較的浅層にあった場合悪性腺腫の初期病変か否かを形態学的に判別するのは難しい。免疫組織学的には悪性腺腫は胃幽門腺粘液に対する抗体HIK1083に強染し、ミュラー管由来の腺管に発現しているエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体やCA125は発現していない。悪性腺腫類似の腺管が頸部の比較的浅層のみに存在する症例の中には悪性腺腫と同様の免疫染色性を示す症例があり、このような病変は悪性腺腫の初期病変ではないかと考えられている。免疫組織学的に悪性腺腫の初期病変を疑う症例5例についてSTK11遺伝子の異常を検索したところ、遺伝子異常は1例も認めなかった。また、クロナリティー解析が可能であった3症例はすべてポリクローナルであった。したがって、このような病変は悪性腺腫の初期像というよりは子宮頚管腺が胃幽門腺化生を起こした病変で腫瘍性病変ではないと考えられる。今後STK11遺伝子異常を検索することにより、悪性腺腫か否かの遺伝子診断、予後診断が可能になると考える。
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