Research Abstract |
前庭系あるいは聴覚系入力の同側あるいは対側優位性,および大脳半球優位性を検討するため,まず,steady-state responseを用いた聴覚野の反応を調べた.左・右耳の入力音を異なった振幅変調でlabelすることにより,左耳・右耳各単耳刺激時と両耳刺激時の聴性定常脳磁場反応を記録した.Steady-State Magnetic Field (SSF)は,両耳聴時には単耳聴時に比較して,同側より対側耳刺激で減弱が少なく,対側投射優位性を示すものと考えられた. また,中枢の異常による影響を見るため,聴放線梗塞患者におけるSSFを記録した.本患者の症状は,耳鳴および多人数での会話時の言語音聴取能低下である.SSFは,左半球で両耳聴時の反応が同側耳刺激時に減弱せず,対側耳刺激耳に減弱しており,正常人に見られた対側投射の優位性に変化を来したものと考えられた. さらに,両側聾の患者において,聴覚路の対側優位性の変化を調べるために,鼓室岬角に針電極を刺入し,電気刺激を行うことによって音感を得(Promontory stimulation test),それによる聴皮質での誘発反応を調べた.いわゆるN100mに相当すると考えられる反応が得られたが,その潜時は遅延し,波形は鈍化していた.また,刺激耳の半数で刺激耳と同側の反応が優位となっており,過去に報告した一側聾患者における聴覚路の可塑性変化(Fujiki et al., Neuroreport 1998)との類似性が示唆された. 一方,三次元的な音の位置を弁別した際の聴性誘発脳磁場を測定したところ,両側聴覚野に二相性の反応が見られた.その潜時は,上下方向,前後方向の位置変化に比して,左右方向に対して早く,位置弁別が左右方向で容易であることを支持する知見であった.また,それらの反応は右半球で大きく,また,その活動位置の領域は右半球で大きく,聴覚による位置情報の解析に右半球が優位であることを示唆する知見であった.
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