2002 Fiscal Year Annual Research Report
網膜色素変性症の視野進行速度と原因遺伝子の関係に関する研究
Project/Area Number |
14571662
|
Research Institution | 山梨医科大学 |
Principal Investigator |
飯島 裕幸 山梨大学, 医学部, 教授 (80114362)
|
Keywords | 網膜色素変性症 / 静的自動視野計 / 視野進行 / 遺伝子異常 / 視力 / 平均偏差 / 線形回帰分析 / 視野感度 |
Research Abstract |
1985年以来,山梨医科大学附属病院眼科外来で経過観察中の網膜色素変性症患者のハンフリー視野計結果を,平均偏差(MD)を使って線形回帰分析で検討中である.すでに10度以内視野のプレリミナリーな結果は1999年に発表しているが,今回さらに症例数をふやして,多くの眼で進行が直線回帰できることが確認され,その進行速度もdB/年の単位で求めることが可能であった.さらに,視野がもう少し広く残存する初期ないし中期の患者において,30度以内視野を用いて同様の検討を行った結果,やはり直線回帰できることが確認できた. さらに視野進行程度と視力低下時期との関係も明らかとなり,中心10度視野の平均偏差(MD)が-15dB以内であれば,網膜変性による視力低下はきわめてまれであることを確認した.網膜変性が原因で視力が低下し始める時期は,症例によってMDが-15から-30dBの範囲で分布している.これまでの結果から,現在の視野のMDと視野感度低下速度から,対象患者が何歳まで0.5以上の視力を保つことができるかという予想が可能となった. また眼底所見と残存視野との関係も検討し,その結果多くの眼では検眼鏡的に黄斑部色調が正常外観を保っている範囲内では感度低下はわずかであるが,その境界の外では絶対暗点に近い感度低下を示しており,検眼鏡的な正常異常の判定が概ね視野結果にも反映されていることが明らかとなった.ただし検眼鏡的に正常であっても視野感度低下が進行している症例も例外的に存在し,それは臨床遺伝学的にX染色体劣性遺伝と考えられる症例に多いことがわかった. 遺伝子異常との関係は現在ロドプシン遺伝子とFSCN遺伝子について検討しているが,進行速度の明らかとなった症例での遺伝子異常は発見されていない.今後,他の候補遺伝子について,検討を進める予定である.(742字)
|