Research Abstract |
1.平成15年度に新たに98例の色覚異常例を経験した。男子92例,女子6例である。また家系的保因者である母親9名から試料を得た。これらのうち主に色覚異常例男子の遺伝子解析を行った。昨年度までの解析例と合わせると,男子の解析例数は436となった。内訳はP65(15%),PA60(14%),D138(32%),DA161(37%),PCD12例(3%)である。他に,女性の25例,本人のDNAがない9例,兄弟の1例のみを解析した9例の計43例がある。 2.P65例の遺伝子型は,P型(1あるいは複数の同構造のM遺伝子のみ)48,PA型(異なる構造の複数のM遺伝子)12,正常型(L,M両遺伝子)3,確定不能(遺伝子数が多い)2,PA60例は,P型4,PA型48,正常型4,確定不能4,D138例は,D型(L遺伝子のみ)117,DA型(異なる構造の複数のL遺伝子)4,正常型8,確定不能9,DA161例は,DA型102,D型13,正常型24,確定不能22,PCD12例は全て正常遺伝子型であった。臨床型と遺伝子型の不一致例が84あったことになる。このうち43例は-71CあるいはAsn94Lys,Gly338Glu,Cys203Arg,Prom231Leuなどのアミノ酸置換で説明がつくものであった。PCDの12例は全て遺伝子型は正常で,かつ全例に-71Cが見られたことは特筆すべきである。遺伝子型が2色型で臨床型が異常3色型である17は現在の解析方法では解決できない矛盾点を持った例である。 3.新たな変異として正常遺伝子型Dの1例において,M遺伝子エキソン5に2塩基の欠失を見出した。 4.プロモーター領域の変異(A-71C)が色覚異常の原因となっていることをまとめて論文にした。 5.第1異常は比較的頻度が低いため多数例を解析した報告がない。第1異常125例の解析結果をまとめて論文にし,投稿した。 6.Long-range-PCRを女性例に応用し,より確実に保因者の診断ができるようになった。
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