2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経損傷時の骨格筋の再生過程における細胞接着分子の変化と機能に関する研究
Project/Area Number |
14571717
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
波床 光男 奈良県立医科大学, 皮膚科学教室, 講師 (00208547)
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Keywords | 骨格筋 / カドヘリン / 神経損傷 / N-カドヘリン / M-カドヘリン / 筋再生 / ウエスタンブロット / 免疫染色 |
Research Abstract |
我々は、末梢神経切離後および再縫合後に、支配筋群に生じるdegenaration/regeneration過程における細胞接着分子N-カドヘリンとM-カドヘリンの発現性の経時的変化とその局在につき検索した。ラットを挫骨神経を切離した群(非縫合群)と切離後即座に再縫合した群(縫合群)に分け、処置後24週目まで経時的に腓腹筋を採取し、H-E染色にて病理組織学的に検討すると共に、ウエスタンブロット法にて発現量を、さらに免疫蛍光法にて局在につき検討した。病理組織学的に、非縫合群では筋の萎縮と変性が時間と共に進行した。一方、縫合群では、処置後筋萎縮が見られたが6週目以降萎縮の程度は徐々に改善し、16週目にはほぼ正常の状態に戻った。N-カドヘリンの発現レベルは、いずれの群においても処置後1週目には上昇したが、縫合群では2週目からすでに低下し、9週目にはコントロールのレベルに戻った。これに対し、非縫合群では2週目以降もレベルの上昇が見られ4週目でピークとなった。その後レベルは低下し、24週目にはむしろコントロールのレベル以下となった。一方、M-カドヘリンのレベルは、いずれの群においても、処置後1週目から低下し、非縫合群ではその後もレベルの低下が続いた。これに対し、縫合群では、処置後9週目にはコントロールのレベルに戻った。局在性は、N、Mいずれのカドヘリンにおいても、筋細胞膜に沿って見られ、蛍光の強さはウエスタンブロット法による発現レベルの経時的変化とほぼ一致していた。以上の結果から、末梢神経損傷後の筋の再生過程においては、いずれのカドヘリンも筋細胞の表面においてその役割を果たしているものと考えられる。非縫合群と縫合群におけるカドヘリンレベルの経時的変化の違いから考えると、N-カドヘリンは神経損傷後、筋細胞へ再生軸索が到達し神経再支配が生じるまでの過程に関与し、一方M-カドヘリンは神経再支配後、筋組織の再構築の過程に関与している可能性が示唆される。
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