2004 Fiscal Year Annual Research Report
遊離筒状皮弁末梢に作成した動静脈瘻の血流増大効果による再建陰茎の勃起の研究
Project/Area Number |
14571722
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
佐々木 健司 日本大学, 医学部, 教授 (30119961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 正樹 日本大学, 医学部, 講師 (70266790)
本田 隆司 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (50246584)
野崎 幹弘 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70086586)
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Keywords | 血管柄付遊離皮弁 / 動静脈瘻 / 吻合部血栓予防 / 皮弁壊死 |
Research Abstract |
血管柄付遊離皮弁の末梢において主軸動脈と静脈の間に作成した動静脈瘻(A-Vシャント)が吻合部血栓形成を予防し、blood steal現象による皮弁壊死を原因しないことを明らかにするために、家兎耳介に作成した遊離皮弁モデルを用いたが、主軸動脈(血管径0.3-0.7mm)と静脈(0.6〜1mm)を吻合して遊離皮弁化する過程で、ほとんどの症例が吻合部血栓により壊死となった。そこで、体重10〜15kgの雑種成犬10頭を用い実験を行った。下腿に伏在動静脈を血管茎とする約5x5cmの島状皮弁を挙上し、その末梢にA-Vシャントを作成した。 皮弁の栄養血管となる大腿動脈の血流量は、皮弁挙上前は46.7±25.8ml/minであったのに対して、皮弁挙上後は3.7±2.4ml/minより有意に減少した。大腿動静脈間にシャントを作成すると、この血流量は162.2±38.ml/minと約45倍の血流量増加効果が得られた。増強した血流量は経時的に低下傾向を示したが、2週目においても大腿動脈血流量増大は持続した。一方、皮島部分への組織血流量は大腿動静脈シャント形成により約50%の低下を認めた。低下した皮島への血流量は、1週目以降は回復傾向を示し、2週目にはほぼ皮弁挙上前の血流量のレベルに復した。動静脈シャント形成は移植皮弁の動脈圧自体には有意な変化をもたらさなかった。しかし静脈圧は17.9±4.4mmHgより44.0±11.9mmHgと著明な静脈圧上昇を認めた。この変化は、静脈圧波形に著明な拍動性の変化を伴っていた。この上昇した静脈圧は経時的には徐々に低下傾向を示したが、2週後においても正常の状態にまで復することはなく、またシャント開放直後より認めた拍動性の変化も振幅が徐々に小さくなったが2週後においても認められた。AVシャント作成により静脈圧が上昇し、動静脈圧較差が減少したことが皮弁自体への血流量低下の要因となっていることが示唆された。また、AVシャント形成後2週目頃には皮弁の血流が正常状態に戻る過程も、静脈圧の正常化と関連していると思われた。 動静脈シャント形成による血行動態の大きな変化は、シャント開放直後より認められた。しかし、50%程度の皮膚への血流量低下は皮弁自体の壊死を来すほどのものではなく、AVシャントを伴った皮弁移植の安全性を裏付けるものであった。また、遊離皮弁においてAVシャント作成の追加は、吻合部における血流量の圧倒的増加により、吻合部血栓を防止するのに極めて有用であると考えられた。
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