2003 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類アメロジェニン遺伝子の分子進化とエナメル質の表現型との関連
Project/Area Number |
14571755
|
Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
石山 巳喜夫 日本歯科大学, 新潟歯学部, 助教授 (70120607)
|
Keywords | 遺伝子 / アメロジェニン / 哺乳類 / 分子進化 / エナメル質 / 表現型 / PCR |
Research Abstract |
哺乳類におけるアメロジェニン遺伝子の分子構造とエナメル質の表現型との関連を探究する目的で、哺乳類13種および比較対象として爬虫類4種のアメロジェニン遺伝子の主要部位exon 6およびintron 5の解読をPCR法とRT-PCR法により行い、分子生物学的解析を試みた。解読されたexon 6は哺乳類、爬虫類ともに共通して140前後のアミノ残基から構成されているが、鯨類だけは121残基とアミノ酸数が少なかった。歯の有無およびエナメル質の発達度とアメロジェニン遺伝子の構造を解析すると、まず無歯動物である貧歯類のアリクイでは遺伝子を捕らえることが出来なかった。おなじ無歯動物のヒゲクジラ類では遺伝子がよく保存されていることから考えれば(石山他、未発表)、オオアリクイが歯を失ったのはヒゲクジラ類より系統発生的に古い現象であることが推察される。また、おなじ貧歯類のナマケモノは遺伝子はよく保存されているものの、exon 6中央部には停止コドンが存在し、正常なタンパクが発現していない可能性があることが明らかになった。本種の歯はエナメル質を持たないとされているので、このアメロジェニン遺伝子の変異が、エナメル質の発現異常の一因になっているのかもしれない。また、非哺乳動物で唯一、エナメル小柱を発現しているUromastyxのexon 6は、挿入によると思われるアミノ酸残基24個の介在が認められ、そのほとんどが疎水性残基のプロリンから構成されていた。この遺伝子に対する挿入がエナメル小柱発現の引き金になった可能性も考えられる。このように、歯およびエナメル質の表現型に特徴のある動物においては、アメロジェニン遺伝子構造に変異を伴っていたことから考えて、本遺伝子は歯の消長およびエナメル質の構造に直接的に関与していることが示唆される。
|