2002 Fiscal Year Annual Research Report
RANKL-TRAFシグナルによる破骨細胞プロトン放出の調節機構
Project/Area Number |
14571784
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
岡部 幸司 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (80224046)
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Keywords | RANKL / 破骨細胞 / H^+放出 / 細胞内pH / 骨吸収活性 |
Research Abstract |
破骨細胞の分化・延命・活性化を調節する因子であるRANKL(receptor activator of NF-kB ligand)に注目し、RANKLが破骨細胞のH^+放出をどの様に調節するかを検討した。実験にはマウス骨髄細胞をマウス頭蓋骨より採集した骨芽細胞と共存培養することにより誘導した多核細胞を用いた。この培養系では多数の多核細胞を採集することが可能で、採集した細胞は酒石酸耐性酸性フォスファターゼ染色やカルシトニン受容体の存在などで破骨細胞であることが確認された。また、採集した破骨細胞をリン酸カルシウムの薄層でコートしたカバーグラス上に数時間培養すると、細胞直下に吸収窩を形成している吸収状態の破骨細胞を観察することが可能となった。従って、以後、この状態の細胞を吸収状態の破骨細胞として実験に用いた。まず、破骨細胞のH^+放出を評価するために、pH指示薬であるBCECF/AMを破骨細胞内に取り込ませ、蛍光比より細胞内pH([pH]_i)を測定した。そして、NH_4Clを数分間前処理し除去すると、[pH]_iの一過性酸性化(アシドーシス)が生じ、次第にH^+放出により静止[pH]_iレベルに回復していった。この回復過程が破骨細胞のH^+放出活性を反映しており、アシドーシスよりの回復時間経過が早いほどH^+放出活性が高いことよりH^+放出活性の測定に有用であることが分かった。次に、H^+負荷後の[pH]_i変化を測定することによりH^+放出活性を評価し、可溶性RANKLの作用を検討した。その結果、RANKL(10〜40ng/ml)を実験用チャンバー内に、5〜10分の短期間に急性投与すると、H^+負荷からの[pH]_i回復時間が遅くなることが分かった。従って、RANKLは吸収状態の破骨細胞に対してはH^+放出活性を促進し、その結果、破骨細胞の骨吸収能が活性化されるとものと考えられた。平成15年度は、RANKLがどのタイプのH^+放出経路を修飾するかを調べ、さらに、その細胞内情報伝達系を検討したいと考えている。 また、今年度は破骨細胞の培養や吸収状態の細胞を準備するために必要な培養器具、[pH]_i測定のための実験器具等に費用が必要となった。
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