2004 Fiscal Year Annual Research Report
口腔扁平上皮癌における樹状細胞の動態と血管内皮増殖因子(VEGF)に関する研究
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14571797
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
草間 薫 明海大学, 歯学部, 教授 (20130479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂下 英明 明海大学, 歯学部, 教授 (10178551)
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Keywords | 樹状細胞 / 口腔癌 / 扁平上皮癌 / VEGF / TGF-β / IL-4 / GM-CSF / CD83陽性細胞 |
Research Abstract |
種々のがん細胞が血管内皮増殖因子(VEGF)を産生し、血管増殖を促すとともに、免疫系細胞を不活性化し、担癌生体の腫瘍免疫機構から逃れ、増殖、進展することがいわれている。口腔扁平上皮癌においてもVEGFが産生され、とくにリンパ節転移症例においてその発現が多いことを我々は示しているが、さらに症例を重ねて検索し、同様の傾向が示された。また、口腔扁平上皮癌におけるVEGF発現と、免疫機構において中心的役割を演ずるとされる樹状細胞との関係において、S100タンパク陽性樹状細胞数およびCD1a陽性樹状細胞数はVEGF発現が増強する例で少なくなる傾向にあった。このことはがん細胞が産生するVEGFが樹状細胞の分化を抑制するとの従来の報告と一致する結果であったが、CD83陽性樹状細胞数についてはその絶対数は少ないながらも増加する傾向にあった。このことから、末梢血単核球にGM-CSFおよびIL-4を作用させ、樹状細胞を分化させるin vitroの系を用い、rhVEGFを作用させたところ、in vivoの結果と同様の現象をみた。すなわち、rhVEGFを作用させることにより樹状化して浮遊してくる細胞が激減し、同時にCD83陽性細胞数はやはり絶対数は少ないながらも増加する傾向にあった。また、タンパクレベルだけではなく、RT-PCRによる検索結果でもCD83の遺伝子発現は、rhVEGF添加により増強されることが示された。in vitroでVEGF添加により誘導されるCD83陽性細胞の機能面についての検索が今後必要である。我々は各種口腔扁平上皮癌培養株(HSC-2、3、4、Ca9-22)においても免疫細胞化学的にVEGFの発現を認めているとともに、培養上清中にもVEGFが分泌されていることをELISAで確認している。これらの培養上清を樹状細胞分化のin vitroの系に作用させると確実に末梢血単核球から樹状細胞への分化が抑制される。この抑制の程度がrhVEGF添加の際よりも著しいため、他の因子の作用が想定された。VEGF以外の因子では、TGF-β、IL-10が指摘されていることから、ELISAにより各培養上清を検索したところ、TGF-βが分泌されていることが認められた。また、最近VEGFのレセプター(VEGFR)が癌組織中の血管内皮、線維芽細胞、マクロファージだけではなく、がん細胞自身にも発現することが報告されているため、口腔扁平上皮癌症例を用いて検索したところ、VEGFR-1、2および3ともにがん細胞に発現していることを認めた。このことは口腔扁平上皮癌の増殖、進展には自らが産生するVEGFによる血管新生の誘導、免疫系細胞の不活性化、ことに樹状細胞の分化の抑制の他にオートクライン機構が存在するものと考えられた。
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Research Products
(2 results)