2002 Fiscal Year Annual Research Report
リン酸カルシウム-ポリリンゴ酸硬化体の歯科応用とその反応機構の解析
Project/Area Number |
14571860
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
日比野 靖 明海大学, 歯学部, 講師 (20238322)
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Keywords | リン酸カルシウム / ポリリンゴ酸 / 機械的性質 / 崩壊率 / X線回折 |
Research Abstract |
リン酸カルシウム粉末としてはリン酸水素カルシウム・2水和物と炭酸カルシウムを混合焼成して得られるリン酸3カルシウム(α-TCP)を使用した.練和液としてのポリリンゴ酸の合成はα-リンゴ酸を用いて合成した.NMRを使用して同定を行ったところ,懸念されていた不純物のフマル酸のピークが消失し,純度の高いポリリンゴ酸が得られた.そこで,このポリリンゴ酸の10,20,30,40%水溶液を作製して,α-TCP粉末と練和を行い得られた硬化体の物性を測定した.比較対照として同じ濃度のリンゴ酸水溶液を用いた.なお,粉液比については操作性を優先するためにP/L=1.0(g/g)と1.5(g/g)の2条件とした.物性の測定は得られた硬化体の硬化時間,圧縮強さならびに崩壊率の測定を行った.さらに,硬化体表面の形状を観察するために,崩壊率測定後の円盤状試料を用いてSEM観察を行った.また,硬化体中の反応生成物の同定を行うために,圧縮強さ測定後の試料を粉砕し,硬化体のX線回折を行った.その結果,硬化時間に関しては水溶液の濃度が大きくなるに従い有意に増加する傾向が認められた.比較対照として用いたリンゴ酸との間に有意差は認められず,硬化時間の点,すなわち操作性に関しては,歯科用セメントとしての有用性が示唆された.圧縮強さに関しても,硬化時間と同様に水溶液の濃度が大きくなるに従い,強さは有意に増加したが,比較対照のリンゴ酸と比較して小さな値を示した.崩壊率に関しては,比較対照のリンゴ酸より有意に大きな値を示した.X線回折の結果からはα-TCPのピークは認められたが,ハイドロキシアパタイトに起因するピークは認められなかった.SEM観察では反応生成物の形状ならびに試料表面の構造物に比較対照のリンゴ酸と差は認められなかった.以上から,リン酸カルシウムとポリリンゴ酸の反応機構の解析の必要性が示唆された.
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