2002 Fiscal Year Annual Research Report
口腔内体性感覚誘発電位に対する咀嚼筋・頸肩筋深部痛の影響と自律神経活動の修飾効果
Project/Area Number |
14571865
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
成田 紀之 日本大学, 松戸歯学部, 助教授 (10155997)
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Keywords | 触感覚刺激 / air puff / 体性感覚誘発電位 / 咀嚼筋痛 / 高張性食塩水 / 手指冷却 / 感覚過敏 / 感覚鈍麻 |
Research Abstract |
【目的】 咀嚼筋深部痛にともなう口の過敏化あるいは鈍麻化に対する臨床モデルとして,高張性食塩水を咀嚼筋に注入し,疼痛発現が口腔顔面部の触感覚受容性に及ぼす影響を検討した。また,手指冷却による影響についてもあわせて検討した。 【方法】 被験者には本学教員6名を用いた。咀嚼筋痛の誘発は,左側咬筋筋腹に0.9%の生理的食塩水,3%あるいは5%の高張性食塩水を0.5ml注入して行った。口唇の触感覚刺激にはair puff刺激装置を用い,刺激に同期した体性感覚誘発電位(SEP)をCz, C3, C4で計測した。計測波形の検討は,筋痛誘発前後のSEPの様相を比較して行った。また,手指の冷却実験は,片側あるいは両側手指を4℃の水に漬けて行い,冷刺激前,冷刺激中,冷刺激後のSEPを比較した。 【結果】 1.疼痛誘発前のSEP波形には陰性ピークとそれに引き続く陽性ピークの短潜時波形成分がいずれの被験者においても観察された。3%高張性食塩水の注入によりSEP波形は低下傾向を示し,痔痛の消失にともなって注入前の様相に回復した。また,疼痛誘発時のSEP波形の低下傾向は3%に比べて,5%高張性食塩水の注入でより顕著であった。 2.手指の冷却は冷刺激前のSEP波形を明らかに上昇させた。また,手指の再温化よってSEP波瑚ま冷却前の様相に回復した。 【考察】 咀嚼筋痛の誘発により口覚唇の触感覚受容性が抑制された理由としては,疼痛情報が下降抑制系を駆動することで二次ニューロンレベルでの疼痛情報の伝達抑制にあわせて触感覚情報の伝達をも抑制し,したがって口唇の触感覚受容性が鈍麻化したものと推察される。また,手指の冷却による口唇の触感覚受容性の亢進には交感神経活動が深く関与すると推察される。
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