2002 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の術後回復に及ぼす口腔ケアの有用性に関する無作為化臨床研究
Project/Area Number |
14571943
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
葭原 明弘 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (50201033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 秀夫 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (00157629)
村田 貴俊 九州歯科大学, 歯学部, 助手 (10313529)
佐藤 雅子 北里大学, 保健衛生専門学院・看護科, 助手
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Keywords | 口腔ケア / 無作為化臨床研究 / 生体ガス |
Research Abstract |
目的: 本調査は、消化器手術をうける高齢者を対象に口腔感染症予防として実施した口腔ケアが術後回復に及ぼす影響について、無作為化臨床研究により評価することを目的としている。 対象および方法: 消化器手術を受けた70〜80歳の患者12名を対象とした。調査に対する同意を確認した後、無作為に従来管理群(6人)と口腔ケア介入群(6人)に分類した。測定指標として、口腔健康状態(口腔乾燥の有無、残存歯数)、口腔気体中の硫黄化合物濃度、咽頭部細菌(カンジダ菌、緑膿菌、肺炎球菌、肺炎桿菌、ブドウ球菌)量を用いた。従来管理群では、1日2回イソジンによる含嗽を行った。また介入群に対しては、1日2回のイソジンによる含嗽に加え、1日2回のブラッシング、義歯洗浄および舌ブラシを用いた舌苔の機械的清掃を行った。口腔健康状態およぴ咽頭細菌量については、術前に加え、術後1、3、5日目にも測定した。 結果および考察: 入院時における対象者の年齢は、従来管理群が74.5(SD=9.6)歳、口腔ケア介入群が71.7(SD=6.6)歳であった。また、残存歯数は、従来管理群が15.3(SD=12.8)本、口腔ケア介入群が17.8(SD=11.5)本であった。 術前と術後5目目の計測から割り出した口腔気体の構成成分量の変化量を比較すると、H_2Sは、口腔ケア介入群で82.3(SD=219.4)ppb減少したのに対し、従来管理群では7.2(SD=42.7)ppb増加した。CH_3SHは、口腔ケア介入群では15.5(SD=97.2)ppb減少したのに対し、従来管理群では2.0(SD=68.6)ppb増加した。(CH_3)_2SHは、口腔ケア介入群で24.0(SD=28.0)ppb、従来管理群では6.5(SD=25.1)ppb減少した。しかし、いずれの差も統計学的には有意ではなかった。また、緑膿菌についてみると、術前には咽頭部に1人も認めらなかったが、術後5日目には従来管理群で6名中3名に認められた。以上より口臭に関しては、統計学的に有意ではなかったが、口腔ケアの介入により減少傾向が明らかであった。今後例数を増やす中でさらに関連性を評価していく予定である。
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