2002 Fiscal Year Annual Research Report
シス効果の適用に基づく効率的有機合成反応の開発とキラル錯体の創製
Project/Area Number |
14572027
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
杉原 多公通 徳島文理大学, 薬学部, 助教授 (40222054)
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Keywords | シス効果 / アルキリジントリコバルトノナカルボニル / Pauson-Khand型反応 / 3級アミン / 水素ガス / 一酸化炭素 / ヒドリド錯体 |
Research Abstract |
本年度は,電子供与性の高いルイス塩基が持つ配位子効果である『シス効果』を利用し,有機遷移金属反応の効率化を図ることを目的に研究を行なった.アルキリジントリコバルトノナカルボニル錯体[CO_3(CO)_9(μ^3-CR)]が触媒する,一酸化炭素の挿入を伴ったアルキン同士あるいはアルキンとアルケンの共環化反応(所謂Pauson-Khand型反応)に焦点を当て,様々なルイス塩基の共存による反応の効率化について検討した.その結果,反応系内に3級アミン類を共存させることによって,錯体の単独使用時に比べ,アルキリジントリコバルトノナカルボニル錯体の触媒回転率が格段に上昇することを見出した.また,水素ガスの共存により,今まで全く触媒活性を示さなかったベンジリジントリコバルトノナカルボニル錯体[CO_3(CO)_9(μ^3-CPh)]がPauson-Khand型反応を触媒するようになったばかりか,触媒法では困難とされてきた嵩高い置換基を有する基質の環化反応を触媒することを見出した.水素ガス共存下での遷移金属触媒反応では,通常,還元的な反応が進行するが,本反応では基質あるいは成績体がさらに還元を受けた生成物が全く得られなかった.ベンジリジントリコバルトノナカルボニル錯体と水素との反応によりヒドリド錯体が生成するが,本反応の結果は,ヒドリド配位子が基質分子に転位する反応よりも,ヒドリド配位子の『シス効果』による環化反応の促進が圧倒的に優先して起こっていることを示している.これは,ヒドリド配位子の『シス効果』を明確にした最初の実験例であり,「遷移金属錯体が触媒する様々なカルボニル化反応の中でも,何故,ヒドロホルミル化反応において最も高い触媒効率を下すのか」という積年の疑問に対する一つの解を与えたものである.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Sugihara: "Methylidynetricobalt Nonacarbonyl Catalyzed Cyclotrimerization of Alkynes"Chem.Commun.. 576-577 (2002)
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[Publications] T.Sugihara: "Handbook of Organopalladium Chemistry for Organic Synthesis"Wiley-InterScience. 74 (2002)