2004 Fiscal Year Annual Research Report
シス効果の適用に基づく効率的有機合成反応の開発とキラル錯体の創製
Project/Area Number |
14572027
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Research Institution | Niigata University of Pharmacy and Applied life Sciences |
Principal Investigator |
杉原 多公通 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (40222054)
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Keywords | シス効果 / キラル錯体 / 軸不斉 / コバルト / アルキン / 一酸化炭素 / トレイトール |
Research Abstract |
本年度は『シス効果』と呼ばれる配位子効果を利用し,個々の配位子上には不斉中心を持たず,錯体を形成することによって初めて中心金属上に不斉を生じるようなキラル錯体の創製を目指し,研究を行った. 空気中で比較的安定なアルキン-ジコバルトヘキサカルボニル錯体がアルケン類と類似の構造を持つこと,および,置換スチルベン誘導体の中には軸不斉を有する化合物があることに着目し,不斉中心を持つハードなルイス塩基を触媒として用い,様々な置換基を有するジアリールアルキンを基質とした,軸不斉を持つアルキン-ジコバルトヘキサカルボニル錯体の形成反応を検討した.その結果,片方のベンゼン環上ortho位にアミノ基や水酸基,メチル基などの置換基を持つジアリールアルキンがキラル錯体生成の基質として良好な結果を与え,キラルな2,3-O-シクロヘキシリデン-1,1,4,4-テトラフェニルトレイトールを触媒として用いた場合に,最高90%e.e.の光学純度で軸不斉を持つアルキン-ジコバルトヘキサカルボニル錯体が生成することがわかった.また,生成したキラル錯体を有機溶媒中加熱すると,ほとんどの錯体がラセミ化することもわかった.軸不斉を持つアルキン-ジコバルトヘキサカルボニル錯体は,これまでその存在すらも考えられたことがなく,正しく新発見と呼ぶのに相応しい研究成果であり,『シス効果』の適用という新しい手法と併せて今後有機金属化学の発展に大きく貢献するものとなるであろう.
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Research Products
(2 results)