2002 Fiscal Year Annual Research Report
肺動脈におけるメカノトランスダクション機構の解明と肺高血圧症への実験治療学的応用
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14572059
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
田辺 由幸 静岡県立大学, 薬学部, 助手 (10275109)
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Keywords | 肺動脈 / ストレッチ / 内皮細胞 / プロスタグランジン / インテグリン / 肺高血圧症 / アンジオテンシンII / リモデリング |
Research Abstract |
力学刺激に対する心・血管系組織の反応は、高血圧や動脈硬化など血行力学刺激が亢進した循環系疾患での血管病態を説明しうる可能性がある。高等動物細胞の力学因子感受性素子(メカノセンサー)として、細胞接着因子インテグリンが一つの候補とされている。肺動脈が関連する循環病態である肺高血圧症は、治療法が十分確立していない難治性疾患である。肺動脈は機械的伸展により即時的に収縮するが、これには内皮由来のプロスタノイド(PG)の関与が強く示唆されている。そこで、肺動脈の力学刺激に対する反応特異性を明らかにする目的で、同血管内皮からの伸展誘発性PG産生機構へのインテグリンの関与を調べた。その結果、(1)伸展により肺動脈においてインテグリン経路が活性化することが示唆された。また、(2)伸展誘発性のPG産生機構にはインテグリン依存性(TXA2,PGF2α)と非依存性(非転換型PGH2)の二経路が存在し、後者による非転換型PGH2が伸展誘発性収縮に寄与することを明らかにした。(業績1) 前述の循環系疾患でのリモデリングの細胞内機構として、ERK-MAPキナーゼ系の活性化が指摘されている。この際、内因性病因物質として、様々な液性因子や血行力学因子が複合的に関与すると考えられている。しかし、実際の循環病態に於ける内因性因子とERK活性化との対応については、未だ明らかではない。肺高血圧症では、肺循環組織リモデリングが起こる。そこで、低圧低酸素飼育により作製したマウス肺高血圧症モデルにおいて、肺循環組織のリモデリング過程でのERK活性化動態を明らかにし、ERK活性化へのアンジオテンシンII(AII)の関与を調べた。その結果、(3)右心室と肺では異なる時間経過でERK活性化が推移した。(4)右心室ではアンジオテンシノゲン(Ang)およびAH受容体(AT1R)のmRNAが減少したが、肺では増加した。(5)右心室でのERK活性化に対しては、AIIの持続投与は明確な効果を示さなかったが、肺におけるERK活性化は、AII投与により増強された。以上から、低圧性低酸素暴露による肺循環リモデリング機構において、ERK活性化は組織ごとに異なる役割を担い、AIIの関与のあり方も異なることが示唆された。(業績2)
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Saito M, Tanabe Y, Kudo I, Nakayama K: "Endothelium-derived prostaglandin H_2 evokes stretch-induced contraction of rabbit pulmonary artery"European Journal of Pharmacology. vol.467. 151-161 (2003)
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[Publications] Kato T, Tanabe Y, Iwata H, Isobe K, Inagaki, Nakayama K: "Chronic hypoxia differentially modulates extracellular signal-regulated protein kinase pathway in right ventricle and lung tissues of mice"Journal of Pharmacological Science. vol.91,Suppl.1. 88 (2003)
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[Publications] Nakayama K, Obara K, Tanabe Y, Saito M, Ishikawa T, Nishizawa S: "Interactive role of tyrosine kinase, protein kinase C, and Rho/Rho kinase systems in the mechanotransduction of vascular smooth muscles"Biorheology. vol.40. 307-314 (2003)
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[Publications] Obara K, Tanabe Y, Ishikawa T, Nakavama K: "Mechanotransduction of vascular smooth muscles : Rate-dependent stretch-induced protein phosphorylations and contractile activation"Japanese Journal of Pharmacology. vol.88,Suppl.1. 10 (2002)