2002 Fiscal Year Annual Research Report
新生児低酸素性虚血性脳症モデルラットの学習・記憶障害の発現機構と治療薬の開発
Project/Area Number |
14572171
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
藤原 道弘 福岡大学, 薬学部, 教授 (10091331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 智明 宮崎医科大学, 医学部, 講師 (80202894)
岩崎 克典 福岡大学, 薬学部, 助教授 (10183196)
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Keywords | 低酸素性虚血性脳症 / 新生児 / 学習・記憶 |
Research Abstract |
ヒトと同じ病理像を示す新生児低酸素性虚血性脳症モデルラット(HIEモデルラット)の研究は,低酸素虚血負荷後の急性期変化における組織学的検討が多く,病態を反映した慢性期における機能解析を行った研究が少ない.我々はHIEモデルラットの長期にわたる組織学的検討ならびにそれに伴う学習記憶能への影響を行動薬理学的に調べた.HIEモデルラットを作製し,低酸素虚血処置後の長期間にわたる組織の経時的変化を検討した結果,傷害の形態は結紮側大脳半球の無症状,萎縮,陥没の3群に分かれ特に大脳皮質,海馬の傷害は著明かつ進行的であった.次いで組織変化と発達期における連動機能や学習記憶能への影響を行動薬理学的に検討を行った.まずrota-rod法を用いて運動機能に対する影響を調べた結果,HIEモデルラットの運動機能は正常であった.また4つの異なる学習記憶課題を用いて低酸素虚血処置による学習記憶への影響を調べた結果,すべての課題で学習記憶の障害が認められ,特に術後10週目以降の学習記憶課題における障害が著明であった.さらにHIEモデルラットにおける組織損傷の傷害程度により3群に分けて学習記憶障害との相関を検討した結果,学習記憶障害と組織損傷の相関は課題によって異なり,進行的な組織損傷の関与が考えられた.HIEモデルラットの学習記憶障害の発現機序をより詳細に検討する目的で,同一課題での経日的な学習記憶能と損傷程度の相関性および学習記憶障害の発現に関わる脳部位の探索を行った結果,組織損傷と学習記憶障害との相関性は経日的により強く認められ,術後9週目以降の海馬,特に視床背内側核への傷害が著明な学習記憶障害を発現したと考えられた.以上の結果から,HIEに対する治療法の開発に本モデルは有用であり,特に術後9週目以降での組織学的,行動薬理学的な保護効果の検討が重要であることを明らかにした.
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Research Products
(1 results)