2003 Fiscal Year Annual Research Report
新生児低酸素性虚血性脳症モデルラットの学習・記億障害の発現機構と治療薬の開発
Project/Area Number |
14572171
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
藤原 道弘 福岡大学, 薬学部, 教授 (10091331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 智明 宮崎大学, 医学部, 講師 (80202894)
岩崎 克典 福岡大学, 薬学部, 助教授 (10183196)
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Keywords | 低酸素性虚血性脳症 / 新生児 / 学習・記憶 |
Research Abstract |
新生児低酸素性・虚血性脳症(HIE)は,周産期脳障害の主要な原因であり重篤な神経学的後遺症をもたらす.我々はHIEモデルラットの長期にわたる組織学的ならび行動学的検討から,HIE処置9週目より緩やかに進行する組織損傷に加えて進行的な学習・記憶障害が認められた.この細胞死は,従来のadult ratsの脳虚血で生じる遅発性細胞死とは異なり,HIEに特有な神経細胞死であることから,slowly progressive neuronal death (SPND)と名付けた.SPNDの機序を追究する目的でCSF中のglutamateとNOxを測定した結果,HIE処置直後ではglutamateが最初に上昇し,その後NOxが上昇する,いわゆるadult ratの脳虚血で認められているglutameta-NMDA receptor-Ca influx-NO pathwayがHIEでも生じていた.一方,HIE慢性期では,glutamateは低下し,NOxが増加する変化が認められ,上記のpathwayとは異なる細胞死の機序が存在していることを示唆した.次に,急性期においてデキサメタゾン,低体温処置,GDNFを処置するといずれも保護作用がみられたが,慢性期では,デキサメタゾンと低体温処置がSPNDや学習障害を改善した.SPNDの環境因子に対する変化を調べるために,単独隔離飼育,卵巣摘出,副腎摘出を行った結果,SPNDはさらに増悪し,それに伴なって学習障害も増悪した.また,慢性期においてNOxが増加していることから,抗酸化剤のMCI-186とDHAをHIE処置3週目より連日投与した結果,著明な改善効果は認められなかった.このことは,HIEのSPNDにNOに関連した酸化ストレスの関与は弱いと考えられた.以上,我々が発見したSPNDはHIEに特徴的であり,HIEの慢性期の発症機序を追究する有用なモデルであると考えられる.
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Research Products
(1 results)
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[Publications] H Ochiai, T Iheda, K Mishima, N Aoo, K Iwasaki, M Fujiwara, S Nakano, T Ikenoue, S Wakisaka: "Local administration of glial cell line-derived neurotrophic factor improves behavioral and histological deficit of neonatal Erb's palsy in rats"Neurosurgery. 53. 973-978 (2003)