2002 Fiscal Year Annual Research Report
IgGの糖鎖修飾によりマクロファージの貪食能を制御する技術の開発
Project/Area Number |
14572186
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
木村 聡 昭和大学, 医学部, 助教授 (30255765)
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Keywords | IgG / carbohydrate / allergy |
Research Abstract |
ヒト血清IgGのFc部分にはアスパラギン結合型の糖鎖が付着しており、蛋白の3次元構造の維持に関与している。この糖鎖組成を分析する新しい手法として、我々はFMOC(後述)を標識物質とした糖鎖分析法を開発した。この技術を用いて、血球貪食症候群におけるIgG糖鎖分析を試みたが、まずその前段階として検体の入手が容易な臍帯血と母体血でIgG糖鎖の比較を行った。すでに我々は成人とは異なる糖鎖組成を臍帯血IgGに認めており、Fc部分を介したマクロファージの貪食能が高いタイプの糖鎖であることを解明している。この免疫活性が高い糖鎖をもつIgGが、より効率的に母体から供給されることにより、胎児の未熟な免疫能を補っていると考えられ、血球貪食症候群でも類似の糖鎖変化の存在が推定される。そこで今回は臍帯血と妊婦血清IgGの糖鎖組成を比較した。分析手法の詳細は申請者の既報(S.Kimura et al.:Clinica Chimica Acta 299:169-177,2000)によった。概略は、まずN-glycanaseにてアスパラギンから遊離させた糖鎖に、蛍光物質FMOC(9-fluoromethylchloroformate)を標識し、Tosoh社Amide80カラムによるHPLC法で分離、定量を行った。その結果、シアル酸を除去したマンノースコア末端にガラクトースが2分子ついたタイプの糖鎖が、母体血、臍帯血とも高いことが判明した。この糖鎖は、他にくらべマクロファージのFc-mediated phagocytosis活性が高いとされている。血球貪食症候群では、逆にこのような糖鎖が過剰にマクロファージを刺激することで、過剰貪食が発来する機序が推定される。平成14年度は、血球貪食症候群症例での血清が蓄積されたため、次年度は本格的な分析を予定している。
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