Research Abstract |
障害児の在宅療養の実態を調査している際,その中で特に難病と呼ばれる病気を持つ子どもが多く存在し,まだ十分に着手されていない状況であることもわかった。難病には小児慢性特定疾患治療研究事業対象疾患として,悪性新生物,慢性腎疾患,喘息,慢性心疾患,内分泌疾患,膠原病,糖尿病,先天性代謝異常,血友病等対象疾患,神経・筋疾患がある。研究を進めていくうちに母親の思いとして,専門医からの詳細な情報を望んでいること,学童期では,学校生活上の困難さを経験していること,社会資源の利用方法がわからず,情報をどこで得ればよいのかわからないこと,家族の中でも協力が得られないことがあること,子どもに生活上の制限があるときの反動への不安があること,子どもへのケアの負担感を感じたことがあること,急変時の受け入れ先の不安があること,成長とともに対処の困難さを感じていること,医療者と家族の思いが一致せず,不安を抱えていることなどが挙げられた。長期療養をする子どもの在宅ケアは,医療や福祉,教育での多くの職種や部門との連携の上に成り立つとされているが,親は学校や医療への不安を持っている。また,疾患によって医療・学校などの連携の困難さの程度に違いがあり,その子どもの生活の困難さによって支援方法を考える必要があることを痛感している。2004年7月アメリカ合衆国カンザス州トピーカ市ウォッシュバーン大学看護学部でInternational Conference of the Post FIPSE-EU Consortiumが行なわれ,The need for the reinforcement of pediatric home care : The status of the severely handicapped children at home in Japan.を発表したが,重症心身障害児の在宅支援については,どこの国も対策が不十分であり,親が困っているという現状を再認識した。国内学会でも,こうした実態調査に興味を示し,子どもたちへの支援についての質問も多かった。他の分析結果とともに報告書にまとめているところである。 上記と同時進行で,学生ボランティアとともに在宅療養をしている子どもたちのサークルや患者会に関わっている。先日肢体不自由の子どもたちが雪山でそり遊びをするイベントに出席した。雪山でのそり遊びに子どもたちは歓声をあげ,学生は関わりを通して,障害を持つ子どもの素直な気持ちを理解していた。普段施設の中で関わる子どもは制限された生活をせざるを得ない状況にあるが,雪山の子どもたちは,自分の意思をしっかり相手に伝え,伸び伸びとしていた。母親達は,そうした子どもたちの笑顔に喜び,今後の育児への活力となったようであった。また,障害を持つ子どもに他の兄弟がいる場合の親の苦悩を知り,障害を持つ子どもへの支援は,家族全体への支援であることとしてとらえる必要があることが示唆された。
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