2005 Fiscal Year Annual Research Report
ポストゲノム期社会における文化的変容と、それへの社会的対応に関する科学論的研究
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14580001
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Research Institution | The University of Tokyo, Graduate School of Education |
Principal Investigator |
金森 修 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90192541)
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Keywords | ポストゲノム社会 / 生殖系列遺伝子改変 / 新優生学 / 思考実験 / プロメテウス・コンプレックス / クローン |
Research Abstract |
本年度は、4年間続いてきた本研究課題の完成の年度であった。本研究の目的は、ヒトゲノム計画の成果、つまり、ヒトゲノムの塩基配列のほぼ完全な解読をうけて、その後、ヒト遺伝学が順調に進展したときに予想される、多様な問題群について、特にその社会的、哲学的、倫理的問題群への照射を行うということだった。 確かに、4年前に比べて、ヒト遺伝子の遺伝解読の在り方が、セントラル・ドグマが想定していたような比較的単純なものだというような認識は、一層支持しがたいものになっている。例えばnon-coding RNAの近年の発見と、その意味のことを考えてもらえばいい。それを考えるなら、ヒト生殖系列に多少ともラフな切り貼りやDNA断片導入などをすることによって、目的の形質を実現するという可能性はきわめて小さい、という予想がなりたつ。 とはいえ、DNAやRNA、ひいては、ヒト遺伝情報の読み取りのメカニズムについての知識はどんどん深まっていくのは確かなので、現時点での実現可能性の予想云々はとりあえず傍らに置き、生殖系列改変という営為がもたらしうる意味を思考実験で展開することは依然として重要である、と私は思う。 これは、ヒト遺伝学研究と並行して進展している生殖補助医療などとの兼ね合いでも一層明らかであろう。この観点から私は、現時点ではまだ世界中で試行さえされていない「ヒト生殖系列の遺伝子改変の哲学」を立ち上げることを試みた。それは、ヒトゲノム計画以降、装いを新たに登場しつつある新優生学の社会的含意の分析をも同時的に内包するものだった。そして、その成果は平成17年秋に『遺伝子改造』という書籍となって結晶した。また、この4年の研究期間内に私は英語でもこの話題で3本ほど、査読付き雑誌に投稿することができた。 こうして、4年間に亘るこの研究計画は、いわば予想以上の成果をあげることができたと自負している。なお、研究遂行にあたっての補助金の恩恵は極めて高く、不可欠なものであった。
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Research Products
(6 results)
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[Book] 遺伝子改造2005
Author(s)
金森 修
Total Pages
351
Publisher
勁草書房
Description
「研究成果報告書概要(和文)」より