2003 Fiscal Year Annual Research Report
公共性の再構築からみた体育・スポーツのシステム再編に関する研究
Project/Area Number |
14580036
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菊 幸一 筑波大学, 体育科学系, 助教授 (50195195)
|
Keywords | 公共性 / 体育 / スポーツ / システム / 政治課題 / 生活課題 / 競技スポーツシステム / 生活スポーツシステム |
Research Abstract |
本研究2年次の主な目標は、公共性を担保する官から民への理念的移行と現状システムの齟齬をどのような具体的戦略システム・モデルによって克服していくのかを明らかにすることであった。 そのため、地域スポーツにおける既存の幅広い体育・スポーツ関係者及び世界的なスポーツイベントを開催する競技団体関係者にインタビュー調査を行うとともに、具体的戦略システム・モデルを構築する体育・スポーツ科学の現状と課題をイギリスのケースを事例に考察することとした。 各都道府県スポーツ行政においては、国の「スポーツ振興基本計画」の策定を受けた「スポーツ振興計画」づくりが本格化しつつあるが、その策定経緯は保健体育課を中心とした政治課題を中心とするものであり、地域スポーツ需要の実態から戦略モデルを構築するものが見られない。後者の需要概念が、「総合型地域スポーツクラブ」の構築というモデルに一元化されるのかどうかの十分な検討が必要である。また、世界的なスポーツイベントを開催する競技団体関係者(今回は世界柔道選手権大会の事例)においても、このようなスポーツイベントの供給が日常のいかなるスポーツ需要によって成立し、発展していくのかに関する需要概念が不明確であり、したがってイベントそれ自体のマスコミ依存による競技団体の自立性が問われる現状が明らかになった。これらは、いずれも競技スポーツシステムを前提とする制度的な枠組みが供給側の論理から脱却できない限界を示しているものと考えられる。このようなシステムの限界を突破するためには、その具体的戦略モデルを構築する体育・スポーツ科学の知的生産の方向性それ自体が問われる。イギリスでは、1987年以降の大学独法化によって体育・スポーツ科学の成果が、理論と実践をつなぐ生活課題と結びつくことがヨリ一層求められる現状にある。したがって、本研究においても、スポーツ需要の実態と供給側の論理をどのように結びつけて「公共性」を担保していくのかについて、従来の競技スポーツシステムを包括するような生活課題を中心とする、いわば生活スポーツシステム・モデルを構築する必要性が理解された。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Koichi KIKU: "Violence and Physical Education in Modern School System of Japan"Deutsch-Japanisches Symposium. Vol.4. 61-72 (2003)
-
[Publications] 小林寛道, 花井宣明, 宮嶋泰子, 佐藤高弘, 菊幸一: "これからのスポーツ環境のあり方〜子どもたちをはじめとした住民の豊かなスポーツライフを実現するために〜"生涯スポーツコンベンション2003報告書. 13-21 (2003)
-
[Publications] 菊 幸一: "生涯スポーツ、その魅力"体育・スポーツ理論. 10-11 (2003)
-
[Publications] 菊 幸一: "考えてみよう、生涯スポーツのあり方"体育・スポーツ理論. 24-25 (2003)
-
[Publications] 菊 幸一: "資料編 インタビューの概要(2)有識者ヒアリング"サッカーくじの収益によるスポーツ振興助成事業のあり方に関する調査研究. 74-76 (2003)
-
[Publications] 菊 幸一: "ライフステージとスポーツ、文化としてのスポーツとかかわり方、ライフスタイルとスポーツ"新保健体育教授用参考資料. 44-76 (2003)
-
[Publications] 今村浩明・浅川希洋志(編): "フロー理論の展開"世界思想社. 348 (2003)