2002 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷者の暑熱環境下における運動時発汗反応特性に関する研究
Project/Area Number |
14580038
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山崎 昌廣 広島大学, 総合科学部, 教授 (40128327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 博 広島大学, 総合科学部, 助手 (70314713)
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Keywords | 脊髄損傷 / 発汗 / 暑熱環境 / 腕回転運動 / 鼓膜温 / 皮膚温 |
Research Abstract |
脊髄損傷(脊損)者の発汗機能は基本的には脊損レベルに依存しているとされているが、これまでの研究では脊損レベルと発汗障害部位の関係については明確にされていない。そこで、本研究では脊損レベルと発汗部位との関係を明らかにすることを研究目的とした。被験者は脊損者成年男子7名(L1〜Th6)であった。被験者は約25℃(相対湿度50%)に設定された部屋に入室し、まず実験前の体水分状態を標準化するために体重の0.5%のミネラルウォータを摂取した。被験者はこの部屋で1時間椅座位安静を保ち、その間皮膚温および心拍数測定用電極を貼付し、最後の5分間に基礎データを収集した。その後、室温約33℃、相対湿度約80%に設定された人工気象室に移動し、さらに30分間の安静を保った。この間、前額部、胸部、腹部および大腿部の発汗量を連続測定した。また、鼓膜温は5分毎に、前額部、胸部、上腕部、大腿部および下腿部の皮膚温および心拍数はそれぞれ1分毎に測定した。鼓膜温は暑熱環境下に暴露された直後から増加し続け、平均で約0.7℃増加した。皮膚温の増加度は部位により異なっていた。上腕部の温度上昇が最も顕著で、30分の暴露後半には約2.3℃の増加を示した。つづいて前額部の上昇が大きく、約1.5℃であった。一方、下肢の皮膚温上昇は比較的小さく、大腿部および下腿部とも約1.0℃の増加であった。心拍数は30分間の高温暴露ではほとんど変化が認められなかった。発汗量は脊損レベル別および部位別による顕著な違いが観察された。前額部および胸部は全被験者において明らかな発汗が観察された。また、腹部の発汗反応についても全被験者において発汗反応が観察されたが、Th6の被験者では量が少なく、さらにTh12の被験者1名では右腹部において局所的な著しい発汗が認められた。一方、大腿部および下腿部は全被験者において発汗量は少なく、Th6およびTh7の被験者では発汗がまったく観察されなかった。Th6より高い損傷レベルでは発汗機能が損なわれると考えられている。本研究においてもTh6の被験者で発汗機能低下が観察された。しかしながら、前額部および胸部の発汗は多量であり、腹部および下肢部の発汗機能低下が体温調節能力に影響するかどうかは明らかにすることができなかった。Th12より低い損傷レベルの被験者では発汗はすべての部位から観察され、これらの脊損者では本研究のような暑熱環境において、発汗による十分な体温調節能力を有していることが示された。
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