Research Abstract |
本研究の目的は,体操競技の採点における分業制,および,非分業制の採点方法の違いが,演技観察の様相と演技の評価に与える影響を検討することにより,演技評価の内容的妥当性検討,さらには,審判技術指導上の基礎資料を得ることであった. 被験者として,本研究の趣旨を説明し承諾を得ることができた国際体操連盟公認男子審判員資格を有する21名を選出し,無作為に三つのグループに分類した.平成14,15年度に開催された国内の競技力を代表する三つの競技会(全日本学生選手権,全日本選手権,NHK杯)において,ゆかと跳馬を除く4種目の演技をビデオカメラを用いて撮影した.これらより,各種目それぞれ4演技づつ計16演技抽出し採点資料とした.各被験者グループには,それぞれ,演技の価値点(難度,特別要求,加点の採点要素の採点結果に演技実施の配点(5.0)を加えた点数)の採点を行なう(A審判法),演技実施の採点を行う(B審判法),価値点と演技実施のいずれも行う(A・B審判法)のいずれかの採点方法を用いて,採点規則男子2001年版にしたがい演技の採点を行うよう指示した.演技の採点にあたり,各被験者にはアイマークレコーダ(nac EMR-8)を装着させた. 演技観察の様相については,特徴的な様相を示した技はみられたものの,これらと採点方法との関連については明らかにすることができなかった.一方,演技評価については,採点方法と種目との交互作用がみられ,つり輪においては,分業制による価値点は非分業制と比較して,10程度低い値を示していた.しかしながら,演技実施にはこの効果はみられなかった.つり輪における静止技は,技の成立の認定において,技の開始と終了姿勢,時間・空間的な姿勢の保持など,質の評価に関わる割合が比較的多いものと考えられる.このことから,採点方法が演技評価の内容的妥当性に与える影響が示唆された.
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