2003 Fiscal Year Annual Research Report
熱ショック蛋白質(HSP70)の転写調節と生体防御作用から運動適応を検討する
Project/Area Number |
14580062
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
三上 俊夫 日本医科大学, 医学部, 助教授 (60199966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 成男 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (00125832)
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Keywords | 熱ショックタンパク質70 / ストレス抵抗性 / 筋損傷 / β-グルクロニダーゼ活性 / クレアチンキナーゼ活性 / 初代培養肝細胞 / 運動トレーニング / LDH |
Research Abstract |
平成14年15年度での本研究の研究結果を以下に示した。昨年度は、運動時の骨格筋の損傷に対する熱ショックタンパク質70(heat shock protein 70;HSP70)の防御的作用を個体レベルで検討した。そのため事前に42℃、30分間の熱ストレスを負荷して骨格筋のHSP70量を増加させたマウスと熱負荷なしのマウスにトレッドミルでの坂下り走を行わせ、運動後の筋損傷マーカーの変化を観察した。下り坂走後12時間後の血漿CK活性は熱負荷+運動群が運動群に比し有意な低値を示した。運動48時間後の筋β-glucuronidase活性の上昇は熱負荷+運動群が有意な低値を示した。また、HE染色にて調べた組織の損傷程度は明らかに熱負荷+運動群で低かった。これらの結果より、運動前の熱負荷は運動後の筋損傷を抑制することが明らかとなった。この原因としては熱負荷により骨格筋のHSP70が増加したことが関係したと考えられた。今年度は、運動度トレーニングによるストレス耐性の増加について初代肝細胞を用いて検討した。実験動物は10週令のWistar雄ラットを用い、これらを無作為に運動トレーニング群と安静群に分け、運動トレーニング群ラットにはトレッドミル走を8週間行わせた。8週間後に両群のラットからSeglenの方法に基づいたコラゲナーゼ灌流法により肝細胞を単離した。単離した肝細胞はpercol密度勾配遠心法により混在する被損傷肝細胞を除去した後、10%牛胎児血清を含む培地で37℃、48時間培養した。この初代培養肝細胞に過酸化水素を添加して酸化ストレスを与え、その後6時間まで経緯的に肝細胞と培地を回収して細胞生存率、HSP70量、培地中のlactate dehydrogenase(LDH)活性を測定した。過酸化水素添加により肝細胞の生存率は低下し、培地中に放出されたLDHは増加したが、その変化は運動トレーニングラット由来の肝細胞で有意に低値であった。そして、この時のHSP70量の増加は運動トレーニングラット由来の肝細胞で有意な高値を示した。これらの結果より、運動トレーニングは酸化ストレス時のHSP70発現に関する転写機構を活性化し、ストレスに対し急速なHSP70の増加をもたらすことによりストレスに対する抵抗性を高め、細胞死から細胞を守ることが示された。
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