2002 Fiscal Year Annual Research Report
村落における入浴の共同化の地域社会への影響に関する社会地理学的研究
Project/Area Number |
14580096
|
Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
白石 太良 流通科学大学, サービス産業学部, 教授 (90179036)
|
Keywords | 共同風呂 / 地域社会 / 風呂仲間 / 擬似的家族 / 自主的運営 / 生活文化 / 北九州地方 |
Research Abstract |
本年度は、入浴の共同化の一つである共同風呂について、市町村別全国悉皆調査のうち未回答市町村への再調査依頼とその回答の整理、前回調査の個票の再検討、愛媛県西部などにおける実地調査の3点の研究活動を行った。その結果、次の成果を得た。 1 村落にみられる共同風呂は全国的な分布を示す生活事象であるが、その密度の高低による地域差が著しく、分布における核心地域が存在する。特に北九州地方、なかでも福岡県では、分布密度が高く成立時期が早いこと、進んだ設備や構造、地域社会との関係の深さなどが認められ、その要因の追及が今後の課題となろう。 2 分布状況から、高密度地域、中密度地域、疎密度地域に大別できる。高密度地域は大半の町村に存在するとともに男女別浴槽など設備が充実しており、地区など自治組織が運営に関わる比率が高い。中密度地域は、そのなかの限られた町村などに集中して隣接町村に存在しない場合も多く、五衛門風呂などによる混浴で、地区とは区別された風呂仲間によって運営されるようである。疎密度地域は、飛び地状に散在する場合で、形態や運営が中密度地域に類似するものと要検討のものとがある。 3 疎密度地域の共同風呂のなかには、鉱泉、温泉の利用であったり共同住宅の共同浴場などのこともあり、また新設の浴場も含まれる。住民による自主的運営という共同風呂としては別種と考えるなど、検討が必要かもしれない。 4 愛媛県などの事例では、入浴の共同化はあくまで「風呂に入る」という生活行為が複数家族によって行われるもので、地域社会に関わるとの意識が希薄であった。しかし一方で、擬似的家族による人間関係が地域社会の基層部分を形成し、近隣住民の結束強化に寄与したともいわれる。
|