2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14580102
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
武田 一郎 京都教育大学, 教育学部, 教授 (30197298)
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Keywords | 駿河湾 / 海岸砂礫堤 / 海水準 / 砂嘴 / 巨礫 / 戸田砂嘴 / 大瀬崎 / 明神池 |
Research Abstract |
本研究では、日本沿岸の海岸砂礫堤について、その頂部と現在の海水準に対応する後浜上限との比高(砂礫堤相対高度:h)を求めることにより、砂礫堤の形成を海水準の変化との関連で考察することを目的としている。上部に砂丘を載せる海岸砂礫堤については、正確なhを求めることが難しいので、本年度は風成堆積物がほとんど載らない礫質の海岸砂礫堤に関する調査・検討を行った。具体的には、駿河湾に面する西伊豆の3つの海岸砂礫堤、すなわち南側から戸田の礫嘴・明神池を閉じる礫堤・大瀬崎の砂嘴を対象とした。 三つの海岸砂礫堤ともに巨礫で構成されるという共通点があり、また、それぞれが隣接しているために、それらを形成した波浪状況は同一とみなすことができる。しかし、各砂礫堤の形態には大きな違いが認められた。まず、戸田の砂嘴は上部に砂丘を持たないにもかかわらず、かなりの凹凸を持つ。凹凸の比高は大きいもので7〜8mであるが、近世の「盛土」の記録もあり、この凹凸の形成の解釈は難しい。人為的、津波、差別浸食などの観点からの検討が必要である。そのためには、凸地を作る構成物質を調べる必要があり、現段階ではhの沿岸方向の複雑な変化を説明することはできない。また、明神池の砂礫堤は上部に凹凸を持たず、漂砂の下流側ほどhが小さくなるので、この砂礫堤は海水準の低下期に形成されたと推察される。大瀬崎は、中央部に基盤岩から成る小高い丘が、また、先端部には淡水の池があり、その形成メカニズムは極めて複雑である。 戸田の砂嘴は、その平面形態から典型的な鉤状砂嘴の例として教科書に掲載されてきた。また、大瀬崎の砂嘴に関しても、従来の研究報告では平面形態が論じられるのみで、これらの砂嘴の形成プロセスは単に沿岸方向への伸長の点から解釈されてきた。しかし、海岸砂礫堤の形成過程を知るためには、立体構造の検討も必要であることがわかった。
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