2003 Fiscal Year Annual Research Report
富士山における亜高山帯上部移行帯の群落構造の動態と環境変動に関する研究
Project/Area Number |
14580104
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
岡 秀一 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (50106605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 洋光 独立行政法人農業技術研究機構, 東北農業研究センター, 研究室長(研究職) (30355276)
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Keywords | 富士山 / 植生変遷 / 樹木限界 / 階段状微地形 / 群落動態 / 砂礫移動 / 凍結融解 / 土壌水分 |
Research Abstract |
本研究の目的は富士山の亜高山帯上部、樹木限界から森林限界にいたる移行帯における植物群落の動態とそれに及ぼす気候・地形的作用を解明することにある。本年度も昨年に引き続き北西斜面における樹木限界以下の群落調査を行うとともにこの斜面特有の階段状微地形を計測し、あわせて砂礫の移動計測も行った。この結果、群落の分布パターンは階段状微地形に現定され、階段の急斜面に集中するという昨年度の調査内容が追認された。群落は標高に従って変化し、標高が増すと急斜面下部に限定的に出現するようになる。種構成に関しても標高による変化が認められ、標高が増すに従って種数は少なくなり、木本はカラマツ→ダケカンバ→ミネヤナギという順で出現する。これらは階段構造を介した土壌水分の違いを反映しているものと予想される。階段構造の平坦面を計測した結果、南西-北東の配列が明瞭で、卓越風向との対応が認められた。さらに階段構造を構成する砂礫の移動をペイントラインによって調べたところ、急斜面ではほとんど移動しないのに対し、平坦面では最大30cm/yrの移動が認められ、花づな状のパターンが顕著であった。ただし、本年度の調査では登山者によると思われる階段構造の撹乱も随所に認められた。従前から継続している地温・気温の観測結果からは、凍結融解によって生じるいわゆる周氷河作用が機能する可能性のある期間はきわめて少ないことが予想されている。これらの結果から群落パターンに大きな影響を及ぼしている階段状微地形の形成には、風および流水の影響が大きく関与している可能性が示唆された。今後、土壌水分の挙動を地温変化で類推し、さらに試坑を掘削して土壌断面や根張りの状況についても調査を行い、階段構造の形成プロセスを解明し、群落の遷移系列に及ぼす影響を解析する予定である。併せて空中写真や古文書などからも植生変遷の情報を探るべく、資料収集と解析を一層進めたい。
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Research Products
(2 results)