2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本と西洋における服飾情報伝達の相互媒介に関する史的比較研究
Project/Area Number |
14580111
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
徳井 淑子 お茶の水女子大学, 生活科学部, 教授 (80172146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 亜紀 国際基督教大学, 教養学部, 助教授 (70323863)
小山 直子 お茶の水女子大学, 生活科学部, 非常勤講師
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Keywords | 流行情報 / 服飾文化 / 色彩論 / 文様 / 紋章 / 祝祭 / 近代化 |
Research Abstract |
本研究は、服飾の流行現象における情報伝達のメカニスムを解明することによって、東西の服飾文化の特質を比較検討することを目的としている。本年度はその基礎研究として、代表者・分担者のそれぞれが日本および西洋の歴史において、服飾デザインの具体的な事例に基付き情報の伝達と相互媒介の一端を明らかにした。 代表者・徳井は、フランス15世紀に遊戯的紋章(ドゥヴィーズ)が服飾文様として採用され、なかでも文学的抒情性をもった涙文が流行したことを示した上で、文学作品・写本挿絵・武芸試合の相互の影響関係を追うことにより、祝祭空間のメディアとしての機能を分析した。また16世紀以後、汎ヨーロッパ的規模で涙と類似の文様が普及したことに、エンブレム・ブックの流布があったことを明らかにした。 分担者・伊藤は、17世紀以降のヨーロッパ美術に絶大な影響を与えた図像学事典、チェーザレ・リーパの『イコノロジーア』にみられる寓意的人物があらわす観念と、その人物の服装の色との関係を調査し、16世紀の複数の人文主義者によって書かれた色彩論の著作が源泉であることを明らかにした。 分担者・小山は、明治後期の陸軍特別大演習とシルクハットとの関係を、近代化を軸に考察し、地方行幸を伴った天皇の関連イベントで着装を強要された洋装の品が、国民国家形成にとって不可欠な「階層化した価値情報」の伝達と浸透に深く関わって流行したことを指摘した。民衆観念に再生産をもたらす道具として仕立てられたという点で、この時期の服飾の流行情報には、近世とは異なる情報伝達の一極的方向性が見出せることを明らかにした。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 徳井 淑子: "眼と涙-14・15世紀フランスのドゥヴィーズとベトラルキスム-"ルネサンス研究. 9. 1-10 (2002)
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[Publications] 徳井 淑子: "グローバル化社会における服飾史研究の意味-現代ファッションと歴史の記憶-"梨花女子大学校生活環境大学セミナー. 19-24 (2002)
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[Publications] 伊藤 亜紀: "これはわたしの愛する子-ヴェロッキオとレオナルド・ダ・ヴィンチ共作《キリストの洗礼》への道"礼拝と音楽. 116. 42-47 (2003)
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[Publications] 伊藤 亜紀: "Il Volo sui ricami. I motivi degli uccelli nel ricamo giapponese (Sec. VII-XIX)"Arca di flio. Gil animali nel merletto, Arnaldo Caprai Centro Studi e Ricerche, Foligno. 63-68 (2002)
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[Publications] 小山 直子: "服装に見る日本の近代化-明治40年代の陸軍特別大演習とシルクハット-"瀧澤喜平次の華麗なる実業家ライフ. 50-53 (2002)
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[Publications] 小山 直子: "ジェンダー関連Webサイトのコミュニティ分析とボータルサイト構築-Webコミュニティの関連性から見たグローバル化-"グローバル化とジェンダー規範に関する研究報告書. 101-122 (2002)
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[Publications] 伊藤 亜紀: "色彩の回廊-ルネサンス文芸における服飾表象について-"ありな書房. 270 (2002)
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[Publications] 小山 直子: "「ジェンダーと開発」に関する日本語文献データベース(報告書およびCD-ROM)"お茶の水女子大学「グローバル化とジェンダー規範」に関する研究会編・刊. 56 (2003)