2002 Fiscal Year Annual Research Report
二型の性決定機構をもつツチガエルの特性を利用した環境ホルモン作用評価試験法の開発
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14580125
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Research Institution | Hiroshima Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
市川 洋子 県立広島女子大学, 生活科学部, 助手 (20084163)
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Keywords | 内分泌攪乱化学物質 / 両生類 / in vivo / 生殖腺の分化 / アトラジン / カルバリル / エンドスルファン / トリフルラリン |
Research Abstract |
近年、野生生物で生殖器の種々の異常が報告され、それが環境中に放出された化学物質の性ホルモン擬似作用に起因することが分かってきた。食生活と深く関わる農薬も被疑物質とされているが、その実証的研究は殆どない。本研究は、1種内でXX/XYとZX/ZZの2型の性決定様式をもつツチガエルの特性を利用して確立したin vivo試験評価法を用い、生殖腺分化の視点から、農薬における環境ホルモン作用の有無を調査すること、さらに、この試験法をより高精度な試験系にすることを目的としている。 初年度は、4種類の農薬、エンドスルファン(END)、アトラジン(ATR)、カルバリル(CAR)およびトリフルラリン(TRI)のエストロゲン作用を調べた。広島♀(XX)と金沢♂(ZZ)の2地方集団間の人工交配で、XZの遺伝的♂を作成し、19〜23日令の5日間、薬浴式曝露を行った。薬剤の曝露濃度は、毒性の強いENDでは0.005、0.001、0.0001μMの3段階を、ATR、CAR、TRIおよび陽性対照群のエストラジオール17β(E2)ではいずれも1〜0.01μMで10倍希釈による3段階で行った。40日令の全個体で生殖腺の顕微鏡標本を作成して組織学的に雌雄の判定を行い、統計的処理により被検農薬におけるエストロゲン作用の有無を評価した。 その結果、陽性対照群の1μME2ではすべて卵巣を、一方、担体対照群はすべて精巣を形成した。これに対し、ATRとTRIでは1および0.1μMの曝露群でいずれも、多数の減数分裂期の生殖細胞が在る部分的卵巣構造の生殖腺をもつ個体が出現し、ATRでは強い、TRIでは弱いエストロゲン作用を有することが明らかになった。しかし、CARとENDでは試験した濃度でその作用は認められないことが分かった。
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