2002 Fiscal Year Annual Research Report
葉酸の生体内機能の評価に関する研究-妊娠期における葉酸摂取の重要性-
Project/Area Number |
14580140
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中田 理恵子 奈良女子大学, 生活環境学部, 講師 (90198119)
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Keywords | 葉酸欠乏 / アポトーシス / カスパーゼ / TUNEL法 |
Research Abstract |
葉酸は、プリン,ピリミジン,アミノ酸,タンパク質など、生体の非常に重要な物質の合成に関与しており、細胞増殖,DNA合成にとって必須のビタミンである。妊娠期間中には胎児が成長し、活発な細胞増殖が行われているため、母体が摂取する葉酸量が、胎児の成長に著しい影響を与えると考えられる。胎児の成長に見合うだけの葉酸を摂取しなければ、細胞増殖,DNA合成が正常に行われないだけでなく、細胞に死を招くのではないかと考えられる。そこで申請者は、妊娠期における葉酸摂取の重要性を評価する基礎的研究として、葉酸欠乏過程における細胞死(アポトーシス)の誘導について検討した。 ラットに葉酸欠乏食を与えて飼育し、2,4,6,8週目に血液および肝臓と大腿骨より骨髄液を採取した。血漿,肝臓,骨髄液を用い、アポトーシスに特異的なタンパク質分解酵素であるカスパーゼ活性を測定するとともに、免疫組織化学的方法(TUNEL法)により組織内のアポトーシス細胞の検出を行った。 血漿と肝臓のカスパーゼ活性は、葉酸の欠乏によっては有意な変化を示さなかった。一方、骨髄液のカスパーゼ活性は、欠乏開始6,8週目で対照群に対して有意に上昇していた。骨髄細胞切片を用いてTUNEL法により検出を行ったところ、アポトーシスに特異的なシグナルが観察された。 以上より、葉酸欠乏過程では骨髄においてカスパーゼ活性の上昇がおこり、アポトーシスの誘導が起こることが明らかとなった。骨髄では、常に造血細胞の活発な増殖が起こっていることから、細胞増殖の著しい胎児においても、妊娠期間中の母体の葉酸摂取量が不足すれば、アポトーシスの誘導が起きると考えられた。
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