2004 Fiscal Year Annual Research Report
物理的特性からみたイカ肉の鮮度を保つ殺し方と保存温度
Project/Area Number |
14580171
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Research Institution | Kwassui Women's College |
Principal Investigator |
久木野 睦子 活水女子大学, 健康生活学部・食生活健康学科, 教授 (70152246)
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Keywords | イカ外套幕 / 透明度 / ATP関連物質 |
Research Abstract |
平成16年度は、昨年度の結果よりイカ筋肉中のATP量がイカ肉の透明度に影響を及ぼし、また、イカ肉の透明度はイカの鮮度指標となりうることが示唆されたことから、イカ筋肉中のATP量の減少を抑えることによる鮮度保持効果の可能性を検討した。 実験はまず、生きたイカを神経切断により即殺し、0.5mm厚に薄切したイカ外套膜の組織片をRPMI1640培養液および生理食塩水中に浸して低温下に保存し、経時的に透明度の変化を観察した。次に、RPMI1640培養液および生理食塩水に各種濃度のATPを添加し、同様に透明度の変化を観察した。さらに、組織切片を90分保存した後に、トリパンブルーによる組織片の染色を行い、添加したATP量の違いによるイカ筋肉組織のバイアビリティーの変化を調べた。 その結果、イカ筋肉組織は生理食塩水中に保存するより、RPMI1640培養液中に保存した方が透明度は保持された。また、ATPを添加した場合、ATPの濃度により組織切片の透明度保持効果は異なり、ATP濃度が低い場合、透明度は保持されたが、ATP濃度が高いものでは培養液にイカ組織片を投入すると、イカ組織片の白変が進行し透明度は低下した。また、一定時間経過後のトリパンブルーによる着色も大きかった。同様に、ATPを添加した生理食塩水の場合も、ATP濃度が高い場合に同様の傾向が見られたが、RPMI1640培養液の場合よりその変化は小さかった。この理由については、高濃度のATPの存在によりイカ筋肉の死後強縮が起こり、死後変化が進むことによって筋肉組織の透明度が失われるとともに、組織構造が変化したことが示唆された。 本実験では、昨年度に引き続きイカ肉の透明度保持にATPが関与していることを確認することができたが、その透明度の保持にATPがどのような作用機序を果たしているのかを明らかにすることはできなかった。
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