Research Abstract |
これまで,Webを利用した学習支援に関する研究が多くなされており,学習教材をネットワーク化する研究NEPでは,作成された教材がWeb上で公開されている。本研究も,力学を対象とした学習教材を作成し,Web上に学習環境を構築することを目的とする。 NEPを含め多くのWeb教材は,教授的な活用を前提とした教科書に基づく教材であり,教育者の授業を支援する。一方,本研究では学習者の主体的な学習が前提であり,教材は学習者自身が使用する。しかし,完全な個人学習では,学習者の能力や学習への取組み方により,誤った理解や行き詰まりを引き起こす可能性がある。そこで,共同学習者とのグループ学習を支援することにより,この問題を解決することを考える。 Web上での学習環境では,時と場所を選ばない学習が可能となる反面,共同学習の支援を考えた場合,必ずしも同時刻に共同学習者が存在するとは限らない。本研究では,過去の共同学習者との共同学習履歴を蓄積し,人間共同学習者が存在しない場合でも,擬似的な共同学習を可能とするための方法論を提案する。現在,蓄積した人間学習者の共同学習履歴をコンピュータエージェントに再利用させることで,エージェントに擬似共同学習者を演じさせることを考えている。 本環境での学習手順は,具体的な学習テーマごとに,シミュレーションを通して,テーマの概要からそのテーマに含まれる動作原理を理解する。理解した原理から公式との関係を学び,最後に文章題を解くことで知識を定着させる。 平成14年度は,具体的なテーマとして「モンキーハンティング」と「単振り子」を取り上げ,力学シミュレータをJava言語で開発した。これらは,学習者が初速度や長さといった物理量を自由に変更できるパラメータレベルのマイクロワールドである。さらに,学習を補助するためのツールとして,数式からグラフを描画するツールと数式を計算するツールも開発した。さらに,共同学習支援として掲示板やWebチャットの提供,そしてWebチャットの会話履歴からエージェントによる人工知能チャットを行うための方法論の提案と試作を行った。
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