2004 Fiscal Year Annual Research Report
英文読解においてスキーマを柔軟に修正する読み手の能力についての研究
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14580263
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
卯城 祐司 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教授 (60271722)
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Keywords | スキーマ / リーディング / ワーキングメモリ / スキーマ修正 / テスト / 読解プロセス |
Research Abstract |
3年計画の最終年度はデータ解釈の総括を行った。初年度は質問紙による集団形式で、英文を一文ずつ増加して新情報を提示し内省報告させ、スキーマ修正および処理システムの変化をみた。優れた読み手はどのテキストでも1)素早く適切に把握、2)正確に修正、3)それる幅が狭く、4)より柔軟に修正した。一方、苦手な読み手は固有名詞など特異なスキーマを連想し、その後の修正が困難であり、semantic memoryではなくepisodic memoryを使用し、個々の経験や知識を抽象化出来ず、各自のエピソードに沿った解釈をする傾向が示された。 2年目は、初年度の集団形式の制約を補う形で、パソコンソフトを用いた個別テストを実施し、日英スキーマ修正テスト、日英リーディングスパンテスト、ガーデンパス文テストおよびその時間測定を行い、プロセスをMDに記録した。3年目にそのデータ解釈を行ったが、結果は概ね集団形式のデータを裏付ける形となった。また、日英版に差異が見られず、スキーマ修正は英語力ではなく、より普遍的な要因によることが明らかになった。ガーデンパス文の実験では、「再解釈」が必要な部分で作動記憶容量の差異の影響が見られ、スキーマ修正等の英文読解プロセスには、この容量が強く関わっていることが明らかとなった。 研究期間内に「スキーマ修正」の関連研究も実施したが、1つはスキーマ修正における読み手の「背景知識測定」であり、(1)多肢選択式と記述式、(2)自由連想法、(3)マッチングの順に適することが示された。2つ目は、スキーマ活性化等のプロセスの「英文和訳テスト」の測定可能性であり、実験結果からは、「内容は理解しているが和訳は出来ない」、「和訳は出来るが、内容は把握していない」などの事例が明らかとなった。これらの結果は、それぞれ学会の全国大会で口頭発表し、その後、複数の学会全国誌に投稿し採択された。
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