2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本人英語学習者の文法能力発達メカニズムの解明に関する研究
Project/Area Number |
14580275
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
大場 浩正 上越教育大学, 学校教育学部, 助教授 (10265069)
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Keywords | 第二言語習得 / 普遍文法 / 機能範疇 / 形式素性 / 関係節 / Generalised Blocking Principle / Subjacency |
Research Abstract |
成人第二言語学習者が,どの程度,第一言語の習得をコントロールするといわれている普遍文法(の原理)を利用出来るのかを調査している近年の第二言語習得研究は,第一言語において活性化されていない機能範疇に含まれる形式素性の習得に焦点を当ててきた。本研究は,同様の研究方針に沿い,成人日本人英語学習者が,日本語では具現化されていない,英語関係節における関係節演算子移動の駆動をもたらす形式素性を習得出来るか否かを,次の2つの普遍文法の原理の観点から調査する:すなわち,(1)関係節の意味を計算するための意味的操作の適用に関する「一般化阻止原理(Generalised Blocking Principle)」と(2)関係節形成にwh移動が関与しているか否かを判断するための「下接の原理(Subjacency Principle)」である。もし,成人日本人英語学習者が,英語関係節の補文標識節(CP)に含まれる形式素性[+R]を習得し,その結果,彼(女)らの関係節の理解に関係節演算子の移動が関与しているなら,「一般化阻止原理」が働き,文法的な関係節と非文法的な関係節の正確な判断が出来,また,「下接の原理」が働き,下接の条件に違反した非文法的な関係節演算子移動を正しく排除できるはずである。 実験には287名の成人日本人英語学習者が参加した。参加者は総合的な英語能力を測るテストであるOxford Placement Testの得点により,ElementaryからAdvancedまでの5段階に分けられた。実験には文法性判断テストが用いられ,実験参加者は提示された文の文法性を5段階で評価した。統制群として英語母語話者16名が実験に参加した。 結果として,成人日本人英語学習者は,総合的な英語能力がpost-intermediateレベルに達すると関係節の表層的な形態的特徴の文法的な判断および下接の条件に違反した関係節構文の判断に関して,英語母語話者と同様の反応を示した(統計的有意差なし)。従って,成人日本人英語学習者は関係節演算子移動の駆動をもたらす形式素性を習得し,「一般化阻止原理」が働くと結論付けることが出来る。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 大場浩正: "日本人英語学習者における関係節とwh疑問の形態的特徴の発達過程"上越教育大学研究紀要. 第23巻第1号. 167-181 (2003)
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[Publications] 大場浩正: "Semantic 'blocking effects of functional categories in Japanese EFL learners'interlanguage grammars"上越教育大学研究紀要. 第23巻第2号(印刷中). (2004)