Research Abstract |
研究期間の2年目にあたる本年度は,前年度の考察,研究装置・資料の整備を受け,文型データベース作成の前提となる基礎的作業を下記の点について具体的に進展させた。 1 文型の概念の確立に基づくデータベースの基本フォーマットの策定および試行的データ入力 一般に文型と言ってイメージされるのは,動詞の格支配のパターンすなわち構造文型であるが,これは'文'の型としての文型ではない。本研究では,文型を,あくまでも'文'をそのモーダルな意味・機能との相関において形式的に特徴づける型と規定し,その文法的な徴証を,動詞のムード(モダリティ)形式と状況語,主語,モーダル副詞,終助詞,従属文との共起関係のあり方に求めることとした。この枠組みに従って,データベースの基本フォーマットを以下のように策定した。本データベースは,基本的なモーダルな意味である,叙述・意志・命令・疑問の4部門に分けて,入力作業を行う。叙述:無標のムード形式スルは,意味・用法が多様であり,文型としての特徴が出にくいことから,有標形式すなわちダロウ・ラシイなどの認識的モダリティの形式を対象とする。意志:ムード形式のシヨウを対象とする。ただし,対話では意志用法よりも勧誘用法が多用されることから,これも視野に入れる。命令:ムード形式のシロに加えて,依頼形式のシテクレを対象とする。疑問:特に否定疑問文に焦点を当てる(本年度,その類型に関する基礎的な考察を行い,論文として発表した)。本年度は,小説と新聞のコーパスを材料にし,このフォーマットに従って,試行的なデータ入力を行った。 2 認識的モダリティの記述的研究の総括 日本語記述文法研究会のメンバーとして共同研究の形で進めてきたモダリティの記述的研究をまとめ上げ,日本語で初めての組織的・体系的・網羅的な記述文法書として公刊した。研究代表者は,認識的モダリティの記述を担当した。これによって,本研究における叙述文に対する分析の観点をほぼ確定することができた。 3 組み立て形式の研究 文型研究の重要課題の1つとして,組み立て形式の文法化の問題がある。本年度は,ダブルテンス形式のスルコトガアルにおける,反復性といったアスペクチュアルな意味と可能性といった客観的モダリティに関わる意味との交渉について考察し,会発表を行った(第28回関西言語学会「反復性から可能性へ--現代日本語のスルコトガアル--」(2003年10月19日神戸市外国語大学)。
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