Research Abstract |
本研究課題の研究期間の最終年度にあたる本年度は,これまでの研究成果について,論文の執筆・投稿,試作データベースの整備,研究成果報告書の作成といった形で,とりまとめを行った。 1 論文の執筆・投稿 昨年度行った学会発表(関西言語学会)の内容を論文化して学会誌に投稿した。この論文では,組み立て的な形式が構造文型から表現文型に移行する事例としてスルコトガアルを取り上げ,反復性と可能性の交渉について時間的限定性の観点から考察した。また,話し言葉の表現文型の研究として,確認要求文の類型に関する論文を執筆し,岡山大学大学院文化科学研究科紀要に投稿した。この論文では,「ダロウ」とその類義形式を取り上げ,聞き手に対する働きかけ方と確認の対象の二つの観点から類型化した。 2 試作データベースの整備 いくつかのタイプのデータベースを試作した後,パラダイム型データベースと属性指定型データベースの二つをプロトタイプとして採用し,前者については否定疑問形式,後者については新聞記事における認識のモダリティ形式を素材として,試作データベースを整備した。 3 研究成果報告書の作成 3年間にわたって行ってきた本課題の研究成果を報告書(A4判181ページ)の形にまとめた。報告書には,まず,「論文編」として,1に記した2論文と,昨年度公表した否定疑問文を修正加筆のうえ収録した。また,「記述文法編」として,昨年度公刊した記述文法書のうち,研究代表者が執筆した部分に若干の修正を加えて収録した。さらに,「データベース編」として,2に記した試作データベースの一部をプリントアウトして掲載し,その作成経緯について解説した。また,本研究において開発した,コーパスから表現文型を抽出する技法についても解説した。このデータベース編で使用したテキスト処理ツールを付録CD・ROMに収録し,報告書に添付した。 本研究では,研究期間を通じて,日本語文型データベースを作成するにあたって基礎となる,言語研究(文の類型や意味に関する日本語文法研究),言語教育的見地からの実践(参照文法書・記述文法書の作成),情報技術的な創意(データベース構築の方法論の模索)の三つの部門について,基礎的な研究段階としての成果を得た。
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