2003 Fiscal Year Annual Research Report
自動車事故と救済制度の選択-自動車保険制度を中心に
Project/Area Number |
14580475
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Research Institution | TOYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
浅井 尚子 富山大学, 経済学部, 教授 (80202571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 理恵 千葉大学, 法経学部, 助教授 (40283056)
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Keywords | 事故補償制度 / 自動車事故 / 自動車保険 / 法と経済学 |
Research Abstract |
1 本年度の研究活動は、形式的には、研究会6回、外国での調査・資料収集は1回および各研究者分担の個別的研究である。 2 比較制度論的検討の対象としてイギリスを選び、研究分担者とともに現地調査を行い、私保険としての自動車保険のいくつかの問題に焦点を当てて調査・資料収集を行った。同国の自動車事故に関わる法制度は、伝統的な損害賠償、強制保険およびそれを補完する制度(MIB)である。損害賠償においては、過失の立証の困難を注意義務の極端な高度化によって克服したかにみえたが、損害が重大であるにもかかわらず加害者の過失が立証できない事例があることがいわれ、その救済はニュージランド型またはそのバリエーションとしての社会保障的制度によるしかないと考えられる。また強制保険については、保険約款の保険者免責の扱いの検討が必要である。補完的制度(MIB)は、強制保険では給付の対象となら内務保険者事故やひき逃げ事故の被害者の救済を目的としている。以上の制度の概略を把握し、問題点を抽出した。 3 経済理論では、主に被害者による保険請求とその結果としての被害者の救済を研究した。被害者は保険会社に比べ情報をあまり持たず、特に被害者が運転者(=保険加入者)ではない場合、支払われる保険金額が不利なものとなりがちであるとの指摘もなされている。本研究ではこれを保険会社と被害者の間の交渉として捉え、理論的に見た場合どのように説明されるのか、また事態を改善するためにはどのような制度を設けるべきかの検討を行った。 4 実証面では、完全に私保険のみで運営されているイギリスにおいて、日本を含む他国とどのような相違があるかを調査した。結果、運転者が支払う保険料率に、そのリスク分類によって大きな格差が存在することが示され、完全な私保険化を行ったとしても大きな問題点を残す可能性が高いことが推測された。これらの具体的成果とその実証については、論文を準備中である。
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Research Products
(1 results)