2002 Fiscal Year Annual Research Report
湖沼の動物プランクトン群集に及ぼす温暖化影響の実験的解析
Project/Area Number |
14580567
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
花里 孝幸 信州大学, 山地水環境教育研究センター, 教授 (60142105)
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Keywords | 温暖化 / 湖沼生態系 / 動物プランクトン / 低温 / 餌密度 / 固体群動態 |
Research Abstract |
地球温暖化は、冬期の水温を上昇させることによって、低温に適応した冬の湖沼生態系に深刻な影響を及ぼすと考えられる。それを評価するために、異なる低温条件下で自然の環境ストレス(餌不足)がミジンコ個体群に及ぼす影響を実験的に解析した。実験では、湖沼生態系の重要種といえる大型枝角類のオオミジンコを用い、異なる温度条件(10、15、20℃)で二段階の餌密度条件(高、中、低餌密度)下で飼育し、ミジンコの成長、成熟サイズ、成熟期間、成熟齢、生存率を解析した。低餌密度では、20℃、15℃で飼育した個体よりも低温の10℃で飼育した個体の方が体長が大きく、最大生存齢が高くなった。すなわち、低温環境下のミジンコには、より高温下のミジンコよりも高い低餌密度耐性があることが示されたことになる。このことは、低温環境下では、ミジンコ個体群に餌不足の影響が現れにくいことを意味し、言い換えれば、冬期に水温が上昇すると、それまで重要な要因となっていなかった冬期の低餌密度が、ミジンコの個体群動態を左右する要因となる可能性を示唆している。高餌密度では、いずれの水温でもミジンコ個体は成熟後無性生殖を行ったが、中餌密度では10℃で耐久卵の生産が見られた。耐久卵の生産は低温と餌密度の低下で引き起こされることが示されたことになる。このことから、温暖化によって水温が上昇すると、ミジンコの耐久卵生産にも影響が及び、一年を通したミジンコの個体群動態に影響が及ぶものと考えられる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] T.Hanazato, et al.: "UV impact on vertical distribution of crustacean zooplankton in a subalpine mire pool : an enclosure experiment"Verh. Internat. Ver. Limnolo.. 28. 1129-1133 (2002)
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[Publications] M.Sakuma, T.Hanazato: "Abundance of Chydoridae associated with plant surfaces, water column and bottom sediments in the macrophyte zone of a lake"Verh. Internat. Ver. Limnolo. 28. 975-979 (2002)
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[Publications] M.Sakuma, T.Hanazato, R.Nakazato, H.Haga: "Methods for quantitative sampling of epiphytic microinvertebrates in lake vegetation"Limnology. 3. 115-119 (2002)
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[Publications] K.-H.Chang, T.Hanazato: "Morphological defense of Bosmina fatalis against inbertebrate predators in Lake Suwa"Verh. Internat. Ver. Limnol.. 28(印刷中). (2002)